簿記の種類 単式簿記と複式簿記
簿記には単式簿記と複式簿記の2種類があり、記帳方法や仕組みが違いますが、単に簿記といえばほとんどの場合、複式簿記のことをいいます。
単式簿記とは
単式簿記とは、一つの取引につき一つの科目を使用して帳簿に記録していく方法をいいます。例えば、現金や預金などある特定の財産の増減する取引だけに絞って1科目だけ記録するものです。そのため一つの取引項目を把握したい場合におすすめします。
株式会社を例にすると下記のようになります。
4月1日 現金10,000円をもとに事業を開始。
4月8日 商品を現金3,000円で購入。
4月10日 商品2,000円分を販売し、現金5,000円を受入。
4月15日 仕入や経費支払のために1,000,000円を借入。
4月18日 文房具を現金2,000円で購入。
4月19日 商品を掛けで300,000円分購入。
4月21日 パソコンを現金250,000円で購入。
4月23日 代金は翌月受け取る約束で商品200,000円分を500,000円で販売。
4月25日 給与150,000円を現金で支払。
上記の取引を単式簿記で表すと、現金の増える取引と現金の減る取引に分け、現金の増える取引を左側、減る取引を右側に記載し、現金残高を記載すれば終了になります。
日付 | 摘要 | 入金 | 出金 | 現金残高 |
---|---|---|---|---|
4月1日 | 現金10,000円で事業開始 | 10,000 | 10,000 | |
4月8日 | 商品を現金3,000円で購入 | 3,000 | 7,000 | |
4月10日 | 商品を現金5,000円で販売 | 5,000 | 12,000 | |
4月15日 | 1,000,000円を借入 | 1,000,000 | 1,012,000 | |
4月18日 | 文房具を2,000円で購入 | 2,000 | 1,010,000 | |
4月21日 | PCを250,000円で購入 | 250,000 | 760,000 | |
4月25日 | 給与150,000円現金で支払 | 150,000 | 610,000 |
上記を見ればわかる通り、単式簿記ではお金の増減する取引だけに焦点を当てて、いくらお金が増えて、いくら減ったかだけを記帳しますので、単式簿記は家計簿と同じです。
そのため4月10日の「商品を現金5,000円で販売」や4月23日の「代金は翌月受け取る約束で商品200,000円分を500,000円で販売。」の販売取引に対応する売上原価の発生や、4月19日の「商品を掛けで300,000円分購入」取引など現金の出入りがない取引は記帳されず、事業にいくらの費用が掛かり、いくら稼いたのか、在庫はいくら残っているのかなどは分かりません。
また4月15日に、仕入や経費支払のために1,000,000円を借入し、現金が増えていますが、4月の月末の現金610,000円は事業開始時に比べ610,000円増えていますが、これは稼いで増えたのか出資あるいは借入て増えたのか、分かりません。
複式簿記とは
複式簿記とは、財産の増加にも財産の減少にも必ずその原因があり、財産の増減という事実をその結果と原因とから捉えます。
すなわち一つの取引について財産の変動と損益という2方面から着眼して、取引を「資産」「負債」「資本」「収益」「費用」のいずれかに属する勘定科目により借方と貸方に同じ金額を記録する方法で、複式簿記により簿記の目的である「(1)事業者の財産管理のために日々の経済活動による財産の変動を記録する」、「(2)一定期間の経営成績、一定期日の財政状態を明らかにし、利害関係者の意思決定に役立てる」といった目的を達成させることができます。
具体的には、商品を掛けで販売した場合、「売掛金という財産の増加」という事実の認識とともに、財産の増加の原因を「売上(収益)の発生」と認識します。
なお、単に簿記という場合は、複式簿記のことをいいます。また複式簿記には、商品販売やサービス提供者を対象とする商業簿記、製造業で適用される工業簿記などがあります。
「単式簿記とは」での取引例を複式簿記で表現すると下記のようにないます。
(仕訳)
4月1日 | 現金10,000円をもとに事業を開始。 | ||
(借方)現金 10,000 | (貸方)資本金 10,000 | ||
4月8日 | 商品を現金3,000円で購入。 | ||
(借方)仕入 3,000 | (貸方)現金 3,000 | ||
4月10日 | 商品2,000円分を販売し、現金5,000円を受入。 | ||
(借方)現金 5,000 | (貸方)売上 5,000 | ||
4月15日 | 仕入や経費支払のために1,000,000円を借入。 | ||
(借方)現金 1,000,000 | (貸方)借入金 1,000,000 | ||
4月18日 | 文房具を現金2,000円で購入。 | ||
(借方)事務用品費 2,000 | (貸方)現金 2,000 | ||
4月19日 | 商品を掛けで300,000円分購入。 | ||
(借方)仕入 300,000 | (貸方)買掛金 300,000 | ||
4月21日 | パソコンを現金250,000円で購入。 | ||
(借方)備品 250,000 | (貸方)現金 250,000 | ||
4月23日 | 代金は翌月受け取る約束で商品200,000円分を500,000円で販売。 | ||
(借方)売掛金 500,000 | (貸方)売上 500,000 | ||
4月25日 | 給与150,000円を現金で支払。 | ||
(借方)給与 150,000 | (貸方)現金 150,000 | ||
決算整理仕訳 | 売上原価の計算 | ||
(借方)商品 101,000 | (貸方)仕入 101,000 | ||
減価償却費の計算 | |||
(借方)減価償却費 50,000 | (貸方)備品 50,000 |
(借方) | 貸借対照表 | (貸方) | |
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
現金 | 610,000 | 買掛金 | 300,000 |
売掛金 | 500,000 | 借入金 | 1,000,000 |
商品 | 101,000 | 資本金 | 10,000 |
備品 | 200,000 | 利益剰余金 | 101,000 |
合計 | 1,411,000 | 合計 | 1,411,000 |
(借方) | 損益計算書 | (貸方) | |
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
仕入 | 202,000 | 売上 | 505,000 |
給与 | 150,000 | ||
事務用品費 | 2,000 | ||
減価償却費 | 50,000 | ||
当期純利益 | 101,000 | ||
合計 | 505,000 | 合計 | 505,000 |