費用・収益の繰り延べ、見越し 経過勘定(前払費用、前受収益、未払費用、未収収益)の処理、仕訳 簿記3級独学講座

前払費用、前受収益、未払費用、未収収益 経過勘定の処理、仕訳

収益及び費用には、商品の販売など財貨または役務の提供が一度で終了するものと、土地や建物の賃貸借など一定の契約に従い、継続して役務の授受が行われるものがあります。

後者については、対価の受け取り・支払いが契約で定められた期日に行われ、その収入または支出の額で収益・費用が計上されているため、一定の契約に従い継続して行われる役務の授受が期をまたぐ場合、当期に次期以降の分まで受け取ったり、支払ったり、逆に当期に役務の授受がなされていても対価の受け払いが次期以降のため、当期に収益・費用を計上していない場合、期末までに計上された金額では当期に計上すべき正しい金額になりません。

そのため、決算で経過勘定を設けて費用・収益を繰り延べ、あるいは費用・収益を見越し計上することで当期に計上すべき正しい金額に修正します。

この手続きを収益と費用の繰り延べ、見越しといい、次の4つのパターンがあり、

(1)収益の未収
(2)費用の未払い
(3)収益の前受け
(4)費用の前払い

これらの手続きを行うことで、未収収益、未払費用、前受収益、前払費用といった経過勘定項目が記帳され、一定の契約に従い、継続して役務の授受が行われる収益、費用について、当期に計上すべき正しい金額が計上されます。

ここでは、費用・収益の繰り延べ、見越しである前払費用、前受収益、未払費用、未収収益などの経過勘定の処理、仕訳について解説します。

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財貨または役務の提供が一度で終了するもの・継続するもの

収益及び費用には、財貨または役務の提供が一度で終了するものと、一定の契約に従い、継続して役務の授受が行われるものがあります。

(1)財貨または役務の提供が一度で終了する収益、費用の例
商品売上、償却債権取立益、固定資産売却益、仕入、通信費、旅費交通費など

(2)一定の契約に従い、継続して役務の授受が行われる収益、費用の例
受取家賃、受取地代、受取利息、支払家賃、支払地代、給料、保険料、支払利息など

費用の繰り延べ(費用の前払い)

翌期以降の費用を当期に支払い、支出額で費用を計上している場合、当期に計上された費用の中には翌期以降の費用が含まれていますので、翌期以降の費用を差し引く必要があります。

すなわち、当期に支払った金額に次期以降の費用が含まれるときは、その金額を当期に費用として記帳された金額から控除(貸方に記帳)し、前払費用(資産)へ振り替えます。これを費用の繰り延べといいます。

なお、前払費用勘定は前払保険料勘定や前払利息勘定、前払給料勘定などその内容が明らかになる勘定を使用します。

また、繰り延べた費用は、翌期以降の費用となるものですので、翌期首に再振替仕訳をして元の費用勘定に戻します。

支払時(当期中)

(借) 保険料 ×××円 (貸) 現 金 ×××円

決算時(決算整理仕訳)

(借) 前払保険料 ×××円 (貸) 保険料 ×××円

翌期の1月~4月分の保険料40,000円(120,000円×4ヶ月÷12ヶ月)を前払いとして繰り延べ。

翌期首(再振替仕訳)

(借) 保険料 ×××円 (貸) 前払保険料 ×××円

前期に繰り延べた1月~4月分の保険料40,000円を当期の費用とするため再振替仕訳。

設例
(1)5月1日、当期の5月から翌期の4月までの1年分の火災保険料120,000円を現金で支払った。決算日は12月31日。

5月1日(保険料支払時)

(借) 保険料 120,000円 (貸) 現 金 120,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 前払保険料 40,000円 (貸) 保険料 40,000円

翌期の1月~3月分の利息60,000円(120,000円×3ヶ月÷6ヶ月)を前払いとして繰り延べ。

1月1日(再振替仕訳)

(借) 保険料 40,000円 (貸) 前払保険料 40,000円

(2)10月1日、当期の10月から翌期の3月までの半年分の支払利息120,000円を普通預金から支払った。決算日は12月31日。

10月1日(利息支払時)

(借) 支払利息 120,000円 (貸) 普通預金 120,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 前払利息 60,000円 (貸) 支払利息 60,000円

翌期の1月~3月分の支払利息60,000円(120,000円×3ヶ月÷6ヶ月)を前払いとして繰り延べ。

1月1日(再振替仕訳)

(借) 支払利息 60,000円 (貸) 前払利息 60,000円

前期に繰り延べた1月~3月分の支払利息60,000円を当期の費用とするため再振替仕訳。

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収益の繰り延べ(収益の前受け)

翌期以降の収益を当期に受け取り、収入額で収益を計上している場合、収益の中には翌期以降の収益が含まれていますので、翌期以降の収益を差し引く必要があります。

すなわち、当期に受け取った金額に次期以降の収益が含まれるときは、その金額を当期に収益として記帳された金額から控除(借方に記帳)し、前受収益勘定(負債)へ振り替えます。これを収益の繰り延べといいます。

なお、前受収益勘定は前受地代勘定や前受家賃勘定、前受利息勘定などその内容が明らかになる勘定を使用します。

また、繰り延べた収益は、翌期以降の収益となるものですので、翌期首に再振替仕訳をして元の収益勘定に戻します。

受取時(当期中)

(借) 普通預金 ×××円 (貸) 受取地代 ×××円

決算時(決算整理仕訳)

(借) 受取地代 ×××円 (貸) 前受地代 ×××円

再振替仕訳(翌期首)

(借) 前受地代 ×××円 (貸) 受取地代 ×××円

設例
(1)5月1日、当期の5月から翌期の4月までの1年分の地代240,000円が普通預金に入金された。決算日は12月31日。

5月1日(受取時)

(借) 普通預金 240,000円 (貸) 受取地代 240,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 受取地代 80,000円 (貸) 前受地代 80,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 前受地代 80,000円 (貸) 受取地代 80,000円

(2)10月1日、当期の10月から翌期の3月までの半年分の利息120,000円が普通預金に入金された。決算日は12月31日。

10月1日(受取時)

(借) 普通預金 120,000円 (貸) 受取利息 120,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 受取利息 60,000円 (貸) 前受利息 60,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 前受利息 60,000円 (貸) 受取利息 60,000円

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費用の見越し(費用の未払い)

当期に役務の提供を受けていても当期に支出が無いため当期に費用計上されていない場合、支出額のうち当期の費用にすべき金額は当期の費用として加算し、相手勘定に負債(翌期以降の支払)として計上する必要があります。

すなわち、当期にまだ支払いが行われていなくても、当期の費用とすべき金額は、当期の費用として借方に記帳するとともに、未払費用(負債)を計上します。これを費用の見越しといいます。

なお、未払費用勘定は未払保険料勘定や未払利息勘定、未払給料勘定などその内容が明らかになる勘定を使用します。

また、見越し計上した費用は、当期の費用となるものですので、翌期首に再振替仕訳をして翌期以降の支払時に控除します。

決算時(決算整理仕訳)

(借) 支払利息 ×××円 (貸) 未払利息 ×××円

翌期首(再振替仕訳)

(借) 未払利息 ×××円 (貸) 支払利息 ×××円

支払時(翌期中)

(借) 支払利息 ×××円 (貸) 普通預金 ×××円

設例
(1)5月1日、元金3年後返済、利息は1年毎の後払い、利息3%の条件で10,000,000円を借り入れた。決算日は12月31日。利息、借入金の返済は普通預金から支払うものとする。

5月1日(借入時)

(借) 普通預金 10,000,000円 (貸) 借入金 10,000,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 支払利息 200,000円 (貸) 未払利息 200,000円

10,000,000円×3%×8ヶ月÷12ヶ月=200,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 未払利息 200,000円 (貸) 支払利息 200,000円

4月30日(利払、借入返済時)

(借) 支払利息 300,000円 (貸) 未払利息 200,000円
(貸) 普通預金 200,000円
(借) 借入金 10,000,000円 (貸) 普通預金 10,000,000円

(2)10月1日、土地の賃貸借契約(期間1年、賃料年額600,000円)を結び、賃料の支払いは契約満了日に普通預金から一括支払いの条件として土地を借りた。決算日は12月31日。

10月1日(賃貸借契約時)
仕訳無し

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 支払地代 150,000円 (貸) 未払地代 150,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 未払地代 150,000円 (貸) 支払地代 150,000円

9月30日(地代支払時)

(借) 支払地代 600,000円 (貸) 普通預金 600,000円

なお、契約時に賃料を認識し、決算整理で調整することもあり、その場合は次のような仕訳になります。

10月1日(賃貸借契約時)

(借) 支払地代 600,000円 (貸) 未払地代 600,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 未払地代 450,000円 (貸) 地代家賃 450,000円

9月30日(地代支払時)

(借) 支払地代 450,000円 (貸) 普通預金 600,000円
(借) 未払地代 150,000円

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収益の見越し(収益の未収)

当期に役務の提供をしていても当期に収入が無いため当期に収益計上されていない場合、収入額のうち当期の収益にすべき金額は当期の収益として加算し、相手勘定に資産(翌期以降の収入)として計上する必要があります。

すなわち、当期にまだ受け取りが行われていなくても、当期の収益とすべき金額は、当期の収益として貸方に記帳するとともに、未収収益(資産)を計上します。これを収益の見越しといいます。

なお、未収収益勘定は未収地代勘定や未収家賃勘定、未収利息勘定などその内容が明らかになる勘定を使用します。

また、見越し計上した収益は、当期の収益となるものですので、翌期首に再振替仕訳をして翌期以降の受け取り時に控除します。

決算時(決算整理仕訳)

(借) 未収利息 ×××円 (貸) 受取利息 ×××円

翌期首(再振替仕訳)

(借) 受取利息 ×××円 (貸) 未収利息 ×××円

受取時(翌期中)

(借) 普通預金 ×××円 (貸) 受取利息 ×××円

設例
(1)5月1日、元金3年後返済、利息は1年毎の後払い、利息3%の条件で10,000,000円を普通預金から出金し、貸し付けた。決算日は12月31日。利息及び貸付金の回収は普通預金へ振り込んでもらうこととした。

5月1日(貸付時)

(借) 貸付金 10,000,000円 (貸) 普通預金 10,000,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 未収利息 200,000円 (貸) 受取利息 200,000円

10,000,000円×3%×8ヶ月÷12ヶ月=200,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 受取利息 200,000円 (貸) 未収利息 200,000円

4月30日(利息受取、貸付金回収時)

(借) 普通預金 300,000円 (貸) 受取利息 300,000円
(借) 普通預金 10,000,000円 (貸) 貸付金 10,000,000円

(2)10月1日、土地の賃貸借契約(期間1年、賃料年額600,000円)を結び、賃料の支払いは契約満了日に普通預金へ一括支払いの条件として土地を賃貸した。決算日は12月31日。

10月1日(賃貸借契約時)
仕訳無し

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 未収地代 150,000円 (貸) 受取地代 150,000円

1月1日(再振替仕訳)

(借) 受取地代 150,000円 (貸) 未収地代 150,000円

9月30日(地代受取時)

(借) 普通預金 600,000円 (貸) 受取地代 600,000円

なお、契約時に賃料を認識し、決算整理で調整することもあり、その場合は次のような仕訳になります。

10月1日(賃貸借契約時)

(借) 普通預金 600,000円 (貸) 受取地代 600,000円

12月31日(決算整理仕訳)

(借) 受取地代 450,000円 (貸) 未収地代 450,000円

9月30日(地代受取時)

(借) 普通預金 600,000円 (貸) 未収地代 150,000円
(貸) 受取地代 450,000円