銀行勘定調整表とは?銀行勘定調整表の作り方と仕訳わかりやすく解説 商業簿記2級独学講座

銀行勘定調整表とは?銀行勘定調整表の作り方と仕訳

当座預金には通帳が無いため日々の当座預金残高が分かりません。そのため会社は当座勘定照合表を入手し、日々の入出金や残高を確認します。

しかし、当座勘定調合表は月に1度しか発行されませんので、期末日には残高証明を入手して当座預金残高と帳簿残高の照合を行います。そして残高が一致しない場合は、銀行勘定調整表を作成し、不一致原因を調べるとともに、記帳漏れや修正が必要なことがあれば追加仕訳を行います。

ここでは当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が一致しない理由、当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高の不一致原因を分析するために作成される銀行勘定調整表の作り方、修正仕訳についてわかりやすく解説します。

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当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が一致しない要因

日々の取引が正確に記帳されている限り、銀行の当座預金残高と帳簿上の当座預金残高は一致するはずです。しかし、当座預金の引き出しは小切手や支払手形を介するため、支払先が銀行に小切手を取り付けていない場合や小切手を振り出したものの、相手にまだ小切手を渡していないなど、会社外部の要因によるものと会社内部の要因で銀行の当座預金残高と当座預金の帳簿残高が一致しないことがあります。

両者に不一致が発生した場合、銀行の当座預金残高と帳簿上の当座預金残高のいずれかを修正する必要があり、帳簿残高を修正する場合は仕訳が必要になります。

修正仕訳が不要な当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高の不一致

会社外部の要因により当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が不一致となるケースです。

(1)時間外預入
時間外預入とは、銀行の営業時間終了後に預金に預け入れることです。小切手を夜間金庫へ預け入れるなどです。
この場合、会社は預け入れた日に預金の増加を記帳しますが、銀行では翌営業日の入金になりますので当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

時間外預入は、会社が預入日で入金を記帳している限り処理に誤りがなく、翌営業日には当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は一致しますので、会社での仕訳は不要です。

(2)未取付小切手
未取付小切手とは、取引先に小切手を振り出したものの、取引先がまだ銀行に取り付けをしていないため、銀行で支払い(当座預金からの引き落とし)が完了していない小切手をいいます。

この場合、会社は小切手を振り出したときに当座預金の減少処理をしますが、銀行の当座預金残高は減りませんので当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

未取付小切手は、会社が小切手の振出日に記帳している限り処理に誤りがなく、取引先の取り付けにより当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は一致しますので、会社での仕訳は不要です。

(3)未取立小切手
未取立小切手とは、他人振出の小切手を銀行に預け入れたけれども、銀行の取立が終わっていないものをいいます。

この場合、会社は小切手を銀行に預け入れたときに当座預金の増加処理をしますが、銀行の当座預金残高は増えませんので当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

未取立小切手は、会社が小切手を銀行に預け入れたときに記帳している限り処理に誤りがなく、銀行の取立により当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は一致しますので、会社での仕訳は不要です。

修正仕訳が必要な当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高の不一致

「(1)連絡未通知」は、会社外部の要因により当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が不一致となるケース、「(2)誤記入」「(3)未渡小切手」は、会社内部の要因により当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が不一致となるケースです。

(1)連絡未通知
連絡未通知とは、銀行口座に振込や自動引き落としがあったにもかかわらず、会社に連絡がないことをいいます。

この場合、会社が当座預金の増減について未記帳なため当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

連絡未通知は、会社が記帳することで当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が一致しますので、会社での仕訳が必要です。

設例
10月1日に当座預金へ売掛金の入金10,000,000円と通信費の引き落とし100,000円の引き落としがあったが、銀行からの連絡が無かったため未記帳とになっていた。

(借) 当座預金 10,000,000円 (貸) 売掛金 10,000,000円
(借) 通信費 100,000円 (貸) 当座預金 100,000円

(2)誤記入
誤記入とは、誤って記帳することです。

会社に誤記入がある場合、当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

誤記入は、会社が訂正することで当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高が一致しますので、会社での訂正仕訳が必要です。

設例
10月1日に当座預金へ売掛金の入金10,000,000円があったが、誤って借入による入金処理をした。

(借) 借入金 10,000,000円 (貸) 売掛金 10,000,000円

訂正仕訳の方法については、訂正仕訳(修正仕訳)の仕方。なぜ合算?

(3)未渡小切手
未渡小切手とは、自社で小切手を振り出したにもかかわらず、いまだ相手に渡されていないものをいいます。

この場合、会社が小切手を振り出した時に当座預金の減少処理をしていますが、銀行残高は減少していませんので当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高は不一致となります。

未渡小切手は、会社が小切手による支払いを行わなかったことになりますので、会社での仕訳が必要です。

設例
仕入債務の支払いのために小切手を5,000,000円、広告費の支払いのために小切手を300,000円振り出したが、相手に小切手を渡していなかった。

(借) 当座預金 5,300,000円 (貸) 買掛金 5,000,000円
(貸) 未払金 300,000円

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銀行勘定調整表の作り方

銀行勘定調整表とは、会社の当座預金の帳簿残高と銀行の当座預金残高を比較し、不一致がある場合、不一致の原因を明らかにするとともに差額を調整する表をいいます。

銀行勘定調整表の作成方法には、両者区分調整法、企業残高基準法、銀行残高基準法の3つがあります。

(1)両者区分調整法
修正仕訳が不要な不一致については銀行の当座預金残高を調整し、修正仕訳が必要な不一致については会社の当座預金勘定残高を調整することで両者の金額を一致させる方法です。
この方法により求めた当座預金残高を、貸借対照表上の当座預金残高とします。

銀行勘定調整表

当座預金帳簿残高 10,000 当座預金銀行残高 6,500
(加算) (加算)
未渡小切手※1 5,000 未取立小切手※5 4,000
入金連絡未通知※2 7,000 12,000 時間外預入※6 18,000 22,000
(減算) (減算)
経費誤記入※3 1,000 未取付小切手※7 10,500
出金連絡未通知※4 3,000 4,000
18,000 18,000

18,000が貸借対照表における当座預金残高となります。
当座預金帳簿残高の加算、減算項目についてだけ修正仕訳が必要です。

※1 (借) 当座預金 5,000 (貸) 買掛金 5,000
※2 (借) 当座預金 7,000 (貸) 売掛金 7,000
※3 (借) 旅費交通費 1,000 (貸) 当座預金 1,000
※4 (借) 通信費 3,000 (貸) 当座預金 3,000

(2)企業残高基準法
企業残高基準法は、会社の当座預金勘定の帳簿残高に不一致原因を加減算し、銀行の当座預金残高に一致させる方法です。

銀行勘定調整表

当座預金帳簿残高 10,000
(加算)
未渡小切手※1 5,000
入金連絡未通知※2 7,000
未取付小切手※7 10,500 22,500
(減算)
経費誤記入※3 1,000
出金連絡未通知※4 3,000
未取立小切手※5 4,000
時間外預入※6 18,000 26,000
当座預金銀行残高 6,500

会社の当座預金帳簿残高を基準にしますので、銀行の当座預金残高に対する調整(※5、6、7)は加算、減算が反対になります。

(3)銀行残高基準法
銀行残高基準法は、銀行の当座預金残高に不一致原因を加減算し、会社の当座預金勘定の帳簿残高に一致させる方法です。

銀行勘定調整表

当座預金銀行残高 6,500
(加算)
未取立小切手※5 4,000
時間外預入※6 18,000
経費誤記入※3 1,000
出金連絡未通知※4 3,000 26,000
(減算)
未渡小切手※1 5,000
入金連絡未通知※2 7,000
未取付小切手※7 10,500 22,500
当座預金帳簿残高 10,000

銀行の当座預金残高を基準にしますので、会社の当座預金帳簿残高に対する調整(※1、2、3、4)は加算、減算が反対になります。

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当銀行勘定調整表の作成練習問題

決算において次のことが判明した。修正仕訳を作成するとともに、銀行勘定調整表を作成してください。

(1) 決算日における当座預金の帳簿残高は700,000円であったが、銀行から残高証明を取り寄せたところ、当座預金残高は1,050,000円であった。
(2) 決算日に現金150,000円を当座預金に預け入れたが、深夜であったため銀行では翌日の入金となった。
(3) 買掛金の支払いのため小切手500,000円を振り出したが、仕入先が銀行に未呈示であった。
(4) 得意先から回収した小切手2,000,000円が銀行で未取立であった。
(5) 当座預金から年会費150,000円が引き落とされていたが、連絡がされていなかった。
(6) 借り入れの申込をしていた資金が500,000円入金されていたが、決算日まで連絡が無かった。
(7) 土地の購入代金を支払うために1,000,000円の小切手を振り出したが、相手先に渡されずに金庫に保管されていた。
(8) 売上代金を700,000円当座預金に入金したが、誤って50,000円と記帳していた。

修正仕訳

(2) 仕訳無し
(3) 仕訳無し
(4) 仕訳無し
(5) (借) 会費 150,000円 (貸) 当座預金 150,000円
(6) (借) 当座預金 500,000円 (貸) 借入金 500,000円
(7) (借) 当座預金 1,000,000円 (貸) 土 地 1,000,000円
(8) (借) 当座預金 650,000円 (貸) 売 上 650,000円

銀行勘定調整表

両者区分調整法

(1)当座預金帳簿残高 700,000 (1)当座預金銀行残高 1,050,000
(加算) (加算)
(6)入金連絡未通知 500,000 (2)時間外預入 150,000
(7)未渡小切手 1,000,000 (4)未取立小切手 2,000,000 2150,000
(8)売上誤記入 650,000 2,150,000
(減算) (減算)
(5)出金連絡未通知 150,000 (3)未取付小切手 500,000
2,700,000 2,700,000

貸借対照表の当座預金残高は2,700,000円となります。

企業残高基準法

(1)当座預金帳簿残高 700,000
(加算)
(6)入金連絡未通知 500,000
(7)未渡小切手 1,000,000
(8)売上誤記入 650,000
(3)未取付小切手 500,000 2,650,000
(減算)
(5)出金連絡未通知 150,000
(2)時間外預入 150,000
(4)未取立小切手 2,000,000 2,300,000
(1)当座預金銀行残高 1,050,000

銀行残高基準法

(1)当座預金銀行残高 1,050,000
(加算)
(5)出金連絡未通知 150,000
(2)時間外預入 150,000
(4)未取立小切手 2,000,000 2,300,000
(減算) 2,650,000
(6)入金連絡未通知 500,000
(7)未渡小切手 1,000,000
(8)売上誤記入 650,000
(3)未取付小切手 500,000
(1)当座預金帳簿残高 700,000