簿記の勘定科目 現金過不足の原因、取引、仕訳例~簿記3級独学講座

現金過不足とは?発生原因、取引、仕訳例

現金過不足とは、現金の帳簿上の残高と実際の残高の違いを言います。

現金による売上や経費の支払いをする会社は現金に関する取引が多く、現金の残高は常に変動します。

日々の現金の記帳が漏れなく正確であれば、現金の実際残高と現金の帳簿残高(現金勘定残高)は必ず一致しますが、現金に関連する取引が多いと、記帳漏れや記帳誤りが生じ、現金の実際残高と帳簿残高が一致しないことが頻繁に発生します。

そのため現金を定期的に実査(※)し、実際残高を帳簿残高の違いの原因を把握し、本来の仕訳により帳簿残高を実際残高に合わせるようにします。

しかし、差異原因が分からないものについては一時的に現金過不足勘定で処理し、現金勘定の残高を実際の残高に合わせるようにし、後日、原因が判明したときに現金過不足勘定から本来の正しい勘定に振り替えます。

そして、決算日までに差異原因が判明しなかったものについては、その金額を雑損(費用)、もしくは雑益(収益)で処理します。

なお、決算で生じた現金過不足は、現金過不足勘定を用いずに仕訳します。

※金庫やレジにある現金の実際残高を調べ、現金の勘定残高との一致を確認すること。

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現金過不足の仕訳・処理方法

実際残高が帳簿残高より少ないとき

不一致が生じたとき

取引、仕訳例
現金の実際残高が1,000円だが、帳簿残高が1,500円で、500円が不足している。
現金の不足額を現金勘定の貸方、現金過不足勘定の借方に記入して必ず現金の帳簿残高を実際残高に合わせます。

(借) 現金過不足 500円 (貸) 現金 500円

不一致の原因が判明したとき

取引、仕訳例
現金過不足500円は、文房具の購入記録が漏れていたことが判明した。
差異原因が分かったときは現金過不足勘定の貸方、正しい勘定を借方に記入します。

(借) 事務用品費 500円 (貸) 現金過不足 500円

不一致の原因が決算日までに判明しなかったとき

取引、仕訳例
現金過不足500円の発生原因が、決算日までに判明しなかった。
差異原因が分からなかったときは現金過不足勘定の貸方、雑損勘定の借方に記入します。

(借) 雑損 500円 (貸) 現金過不足 500円

実際残高が帳簿残高より多いとき

不一致が生じたとき

取引、仕訳例
現金の実際残高が110,000円だが、帳簿残高が17,000円で、実際残高が93,000円多い。
現金の超過額を現金勘定の借方、現金過不足勘定の貸方に記入して必ず現金の帳簿残高を実際残高に合わせます。

(借) 現金 93,000円 (貸) 現金過不足 93,000円

不一致の原因が判明したとき

取引、仕訳例
現金過不足93,000円のうち3,000円が配当金領収書の記帳漏れ、90,000円が受取家賃100,000円を10,000円と記帳したことによる桁誤りであることが判明した。

(借) 現金過不足 93,000円 (貸) 受取配当金 3,000円
(貸) 受取家賃 90,000円

不一致の原因が決算日までに判明しなかったとき

取引、仕訳例
現金過不足93,000円のうち3,000円については配当金領収書の貴重漏れであることが判明したが、90,000円については決算日までに判明しなかった。
差異原因が分からなかったときは現金過不足勘定の借方、雑益勘定の貸方に記入します。

(借) 現金過不足 93,000円 (貸) 受取配当金 3,000円
(貸) 雑益 90,000円

決算で現金の実際残高と帳簿残高に不一致が生じたとき

決算で生じた現金過不足は、現金過不足勘定を使わないで処理します。
取引、仕訳例1
決算で現金過不足1,000円が生じ、支払期日の到来した公社債の利札の処理漏れであることが判明した。

(借) 現金 1,000円 (貸) 有価証券利息 1,000円

取引、仕訳例2
決算で現金過不足3,000円が生じ、交通費の処理漏れであることが判明した。

(借) 旅費交通費 3,000円 (貸) 現金 3,000円

取引、仕訳例3
決算で現金の実際残高が帳簿残高より5,000円多いことが分ったが、原因は判明しなかった。

(借) 現金 5,000円 (貸) 雑益 5,000円

取引、仕訳例4
決算で現金の実際残高が帳簿残高より8,000円少ないことが分ったが、原因は判明しなかった。

(借) 雑損 8,000円 (貸) 現金 8,000円
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例題

1.現金過不足勘定の貸方残高が80,000円であったが、売掛金回収の処理漏れであることが判明した。

(借) 現金過不足 80,000円 (貸) 売掛金 80,000円

2.現金の実際残高が帳簿残高より10,000円少ないことが判明したが、後日、通信費の処理漏れであることが判明した。
現金過不足判明時

(借) 現金過不足 10,000円 (貸) 現金 10,000円

通信費の処理漏れ判明時

(借) 通信費 10,000円 (貸) 現金過不足 10,000円

3.現金の実際残高が帳簿残高より60,000円不足していることが分かった。差異原因を調査したところ、後日、25,000円は印紙代の購入の処理漏れ、30,000円は旅費の仮払いの処理漏れであることが分かったが、残りの差額については決算においても判明しなかった。
現金過不足判明時

(借) 現金過不足 60,000円 (貸) 現金 60,000円

印紙代の処理漏れ判明時

(借) 租税公課 25,000円 (貸) 現金過不足 25,000円

旅費の仮払い処理漏れ判明時

(借) 仮払金 30,000円 (貸) 現金過不足 30,000円

決算時

(借) 雑損 5,000円 (貸) 現金過不足 5,000円

4.現金の実際残高が帳簿残高より100,000円多いことが分かったが、後日、タクシー代の処理漏れ5,000円、パソコンの購入150,000円の処理漏れであることが判明したが、それ以外の差異原因は判明しなかった。
現金過不足判明時

(借) 現金 100,000円 (貸) 現金過不足 100,000円

現金過不足の原因判明時

(借) 旅費交通費 5,000円 (貸) 現金過不足 155,000円
(借) 器具備品 150,000円

決算時

(借) 現金過不足 255,000円 (貸) 雑益 255,000円

5.決算で実際残高が帳簿残高より50,000円少ないことが分かったが、買掛金の支払い処理漏れ30,000円、借入利息の処理漏れ10,000円であることが判明したが、それ以外の差異原因は判明しなかった。
決算時

(借) 買掛金 30,000円 (貸) 現金 50,000円
(借) 支払利息 10,000円
(借) 雑損 10,000円

(注)決算で現金過不足が発生した場合、現金過不足勘定は使用しない。