立替金、預り金とは?取引、仕訳例
立替金とは、従業員や取引先のために一時的に行う金銭の立て替え払いのことをいいます。立て替え払いですので、あくまで一時的な勘定で、後で速やかに返してもらうことが前提の権利ですので債権(資産)です。立替金勘定で処理されます。
一般的に従業員に対する立替えが多いですが、外部の企業に対する立替と区別するため、従業員に対する立替は「従業員立替金勘定」で処理することがあります。
一方、預り金とは、従業員や取引先から一時的に預かった金銭で、後で返さなければならない義務ですので債務(負債)です。預り金勘定で処理されます。
給与の支払いに際し、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料、所得税、住民税などを一時的に預り、企業が従業員に代わり支払いますが、この社会保険料、税金などを預った際に発生します。
なお、預り金の内容を明確にするため、社会保険料預り金、源泉所得税預り金などで記帳されることもあります(補助簿を作成し管理することも多いです。)。
立替金も預り金も、あくまで一時的な勘定で、できるだけ速やかに決済することが前提の債権債務ですので、金銭を貸借した場合の貸付金や借入金と区別されます。
立替金の処理・仕訳
一時的に金銭を立て替え払いした時は、立替金勘定(資産)の借方に記帳し、立替金を回収した時に立替金勘定の貸方に記帳します。
なお、得意先が負担すべき運賃などを一時的に立替払いした場合、立替金で処理しますが、売掛金と一緒に回収する場合、売掛金で処理することもあります。立替金も売掛金も債権で、いずれも得意先から回収するため管理を簡便にするためです。
立替金の取引・仕訳例
(1)5月1日、得意先に商品を1,000,000円で掛け販売し、6月30日に回収することにした。
なお発送運賃50,000円を現金で立て替え払いし、売掛金と一緒に普通預金に振り込んでもらうことにした。
5月1日
(借) | 売掛金 | 1,000,000円 | (貸) | 売 上 | 1,000,000円 |
(借) | 立替金 | 50,000円 | (貸) | 現 金 | 50,000円 |
6月30日
(借) | 普通預金 | 1,050,000円 | (貸) | 売掛金 | 1,000,000円 |
(貸) | 立替金 | 50,000円 |
債権の管理を簡便化するため、運賃の立替を売掛金で処理した場合、次のようになります。
5月1日
(借) | 売掛金 | 1,050,000円 | (貸) | 売 上 | 1,000,000円 |
(貸) | 現 金 | 50,000円 |
6月30日
(借) | 普通預金 | 1,050,000円 | (貸) | 売掛金 | 1,050,000円 |
(2) 6月1日、従業員に現金10,000円を立て替え、回収は6月25日に当座預金から支払われる250,000円の給与から天引きすることにした。従業員立替金勘定を使用することにします。
6月1日
(借) | 従業員立替金 | 10,000円 | (貸) | 現 金 | 10,000円 |
6月25日
(借) | 給 料 | 250,000円 | (貸) | 当座預金 | 240,000円 |
(貸) | 従業員立替金 | 10,000円 |
預り金の処理・仕訳
一時的に金銭を預った時は、預り金勘定(負債)の貸方に記帳し、預り金を返したときに預り金勘定の借方に記帳します。
預り金の取引・仕訳例
(1)6月25日、従業員の給与1,500,000円を当座預金から支払うに際し、源泉所得税30,000円、住民税10,000円、健康保険料15,000円、厚生年金保険料12,000円、雇用保険料1,000円を差し引き支払った。
また、6月30日に預った税金、社会保険料を普通預金から支払った。
6月25日
(借) | 給 料 | 1,500,000円 | (貸) | 当座預金 | 1,432,000円 |
(貸) | 社会保険料預り金 | 28,000円 | |||
(貸) | 所得税預り金 | 30,000円 | |||
(貸) | 住民税預り金 | 10,000円 |
6月30日
(借) | 社会保険料預り金 | 28,000円 | (貸) | 普通預金 | 68,000円 |
(借) | 所得税預り金 | 30,000円 | |||
(借) | 住民税預り金 | 10,000円 |
社会保険料預り金は、健康保険料預り金、厚生年金保険料預り金、雇用保険料預り金として細分化することもあります。
また、所得税預り金、住民税預り金は、税金預り金などの勘定でまとめることもあります。検定試験では問題文の指示に従ってください。
(2)7月25日、従業員の給与2,500,000円を当座預金から支払うに際し、源泉所得税60,000円、住民税15,000円、健康保険料20,000円、厚生年金保険料15,000円、雇用保険料2,000円を差し引き支払った。
また、7月31日に預った社会保険料と会社負担分の社会保険料50,000円(法定福利費で処理)を普通預金から支払い、8月10日に所得税、住民税の預り金を普通預金から支払った。
預り金は健康保険料預り金、厚生年金保険料預り金、雇用保険料預り金、所得税預り金、住民税預り金勘定で処理する。
7月25日
(借) | 給 料 | 2,500,000円 | (貸) | 当座預金 | 2,388,000円 |
(貸) | 健康保険料預り金 | 20,000円 | |||
(貸) | 厚生年金保険料預り金 | 15,000円 | |||
(貸) | 雇用保険料預り金 | 2,000円 | |||
(貸) | 所得税預り金 | 60,000円 | |||
(貸) | 住民税預り金 | 15,000円 |
7月31日
(借) | 健康保険料預り金 | 20,000円 | (貸) | 普通預金 | 87,000円 |
(借) | 厚生年金保険料預り金 | 15,000円 | |||
(借) | 雇用保険料預り金 | 2,000円 | |||
(借) | 法定福利費 | 50,000円 |
8月10日
(借) | 所得税預り金 | 60,000円 | (貸) | 普通預金 | 75,000円 |
(借) | 住民税預り金 | 15,000円 |