研究開発費とは?会計処理、仕訳
研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究、開発とは、新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいいます(研究開発費等に係る会計基準)。
研究・開発の典型例としては、
① 従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探究
② 新しい知識の調査・探究の結果を受け、製品化、業務化等を行うための活動
③ 従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化
④ 従来と異なる原材料の使用方法又は部品の製造方法の具体化
⑤ 既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化
⑥ 工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化
⑦ 新製品の試作品の設計・製作及び実験
⑧ 商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画
⑨ 取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動
があります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針)。
よって研究開発費とは、新製品などの研究や開発に関する費用で、原材料費や人件費、固定資産の減価償却費等、研究開発のために費消されたすべての費用を含みます。
なお、特定の研究開発目的のためだけに使用され、他の目的には機能的・物理的に転用できない有形固定資産などの取得原価も固定資産としては処理せず研究開発費として一時に費用処理します。
また、現在製造している製品や業務の著しいと判断できない改良・改善などを行う活動は、ここでいう研究・開発には該当しません。
研究・開発に含まれない典型例としては、
① 製品を量産化するための試作
② 品質管理活動や完成品の製品検査に関する活動
③ 仕損品の手直し、再加工など
④ 製品の品質改良、製造工程における改善活動
⑤ 既存製品の不具合などの修正に係る設計変更及び仕様変更
⑥ 客先の要望等による設計変更や仕様変更
⑦ 通常の製造工程の維持活動
⑧ 機械設備の移転や製造ラインの変更
⑨ 特許権や実用新案権の出願などの費用
⑩ 外国などからの技術導入により製品を製造することに関する活動
などがあります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針)。
研究開発費の会計処理、仕訳
研究開発費は、すべて発生時に費用として処理し、原則として損益計算書の「販売費及び一般管理費」の区分に表示します。
設例1
従来にはない製品の発想を導き出すための調査・探究に従事している従業員の給料200,000円、この研究開発目的のためだけに使用され、他の目的には機能的・物理的に転用できない有形固定資産300,000円を普通預金から支払った。
(借) | 研究開発費 | 500,000円 | (貸) | 普通預金 | 500,000円 |
設例2
従来の製品と著しい違いを作り出す製造方法の具体化を外部企業に300,000円で委託し、普通預金から支払った。
(借) | 研究開発費 | 300,000円 | (貸) | 普通預金 | 300,000円 |
かつて試験研究費は繰延資産として資産計上することが認められていました。しかし、試験研究費の情報は投資家において非常に重要であるにもかかわらず、費用処理と資産処理のいずれもが認められると比較可能性を損なうといった批判がありました。
また繰延資産とした試験研究費は単なる費用の繰り延べで換金価値がなく、将来の収益獲得効果も不明なことから資産計上にも批判がありました。
そこで「研究開発費等に係る会計基準」において、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究や新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化する費用はすべて費用処理することに統一されました。