試算表とは?試算表の目的、合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の作り方・書き方
試算表とは、総勘定元帳の全ての勘定科目の借方計上額や貸方計上額、残高(貸借差額)を集計した集計表をいいます。
全ての仕訳は借方と貸方の金額が必ず一致し、総勘定元帳の各勘定に転記されるため、転記が正しく行われている限り仕訳帳や総勘定元帳、試算表の全ての勘定の借方と貸方の合計金額は必ず一致します(貸借平均の原理)。
また試算表は、全ての勘定の借方計上合計額と貸方計上合計額、残高(貸借差額)が計上されるため、貸借対照表や損益計算書を作成するうえで非常に便利な集計表です。
これらのことから試算表は、主に
①仕訳帳から総勘定元帳への転記が正しく行われているかを確認する
②全ての勘定の状況を確認し、精算表や財務諸表(貸借対照場、損益計算書)の作成を円滑にする
の2つを目的に作成されます。
なお、試算表は期末において必ず作成されますが、実務においては日々の記帳の正確性や業績把握のために、日計表、週計表、月計表などのように短い期間を単位として作成されます。
試算表の種類と様式
試算表には、合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類があります。
各試算表の様式に決まりはありませんが、概ね次の通りです。
①合計試算表
各勘定の借方合計と貸方合計を集計した試算表です。仕訳帳から総勘定元帳、総勘定元帳から試算表への転記が正しく行われている限り、貸借平均の原理により合計試算表の借方合計金額と貸方合計金額は必ず一致します。
②残高試算表
各勘定の借方合計と貸方合計の差額を集計した試算表です。残高試算表の借方合計金額と貸方合計金額は必ず一致します。また、各勘定の金額はそのまま貸借対照表や損益計算書の金額を示します。
③合計残高試算表
合計試算表と残高試算表を1つの表にまとめた試算表です。
試算表の作り方・書き方
次の総勘定元帳に基づき計試算表、残高試算表、合計残高試算表の作り方・書き方について、それぞれ解説します。
合計試算表の作り方・書き方
合計試算表は、総勘定元帳の各勘定科目の借方合計金額と貸方合計金額をそれぞれ試算表の借方と貸方に転記します。
残高試算表の作り方・書き方
残高試算表は、総勘定元帳の各勘定科目の借方残高と貸方残高をそれぞれ試算表に転記します。
合計残高試算表の作り方・書き方
合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を合算します。最初に合計欄に記入し、その後残高欄に記入します。
(決算整理前)試算表作成問題
設例
下記の取引をもとに3月31日現在の決算整理前合計残高試算表を作成しなさい。
(1)合計試算表(20××年2月末日)
勘定科目 | 借 方 | 貸 方 |
現金 | 100,000円 | 50,000円 |
普通預金 | 1,500,000円 | 500,000円 |
受取手形 | 4,000,000円 | 1,000,000円 |
売掛金 | 2,300,000円 | 300,000円 |
繰越商品 | 500,000円 | |
買掛金 | 2,000,000円 | 5,500,000円 |
借入金 | 250,000円 | 1,250,000円 |
資本金 | 2,000,000円 | |
繰越利益剰余金 | 340,000円 | |
売上 | 10,000,000円 | |
仕入 | 7,000,000円 | |
給料 | 3,500,000円 | |
旅費交通費 | 250,000円 | |
消耗品費 | 100,000円 | |
受取地代 | 800,000円 | |
支払利息 | 240,000円 | |
合計 | 21,740,000円 | 21,740,000円 |
(2)20××年3月1日~3月末日までの取引
3月1日 | 商品を掛けで3,000,000円で販売した。 |
5日 | 商品2,000,000円を掛けで仕入れた。 |
10日 | 借入金500,000円を普通預金から返済した。 |
15日 | 受取手形2,000,000円が決済され、普通預金に入金された。 |
20日 | 買掛金3,500,000円を支払手形を振り出して支払った。 |
25日 | 利息50,000円を普通預金から支払った。 |
28日 | 売掛金1,500,000円を現金で回収した。 |
解答手順
(1)設例の「(1)合計試算表(20××年2月末日)」をもとにT勘定を作成します。
(2)設例の「(2)20××年3月1日~3月末日までの取引」に基づき仕訳をします。
3月1日
(借) | 売掛金 | 3,000,000円 | (貸) | 売 上 | 3,000,000円 |
3月5日
(借) | 仕 入 | 2,000,000円 | (貸) | 買掛金 | 2,000,000円 |
3月10日
(借) | 借入金 | 500,000円 | (貸) | 普通預金 | 500,000円 |
3月15日
(借) | 普通預金 | 2,000,000円 | (貸) | 受取手形 | 2,000,000円 |
3月20日
(借) | 買掛金 | 3,500,000円 | (貸) | 支払手形 | 3,500,000円 |
3月25日
(借) | 支払利息 | 50,000円 | (貸) | 普通預金 | 50,000円 |
3月28日
(借) | 現 金 | 1,500,000円 | (貸) | 売掛金 | 1,500,000円 |
(3)上記(2)の仕訳を(1)で作成したT勘定に転記します。
試算表の合計欄、残高欄の一番下の金額は、借方・貸方それぞれ必ず一致します。そのため借方と貸方の合計が一致しないときは、計算ミスか転記誤り、転記漏れの確認が必要になります。
記帳、転記の正確性の検証
仕訳の借方と貸方の金額は必ず一致しますので、仕訳から総勘定元帳に転記する場合、ある勘定の借方に記帳された金額は、必ず他の勘定の貸方に記帳されます。そのため合計試算表の全ての勘定の借方合計額と貸方合計額、残高試算表の全ての勘定の借方残高合計額と貸方残高合計額は必ず一致します。このことから試算表の貸借一致を確認することで転記の正確性を確認することができます。
しかし、試算表の貸借が一致していても、また転記が正確であっても次のような場合は記帳が必ずしも正しいとは限りません。
(1)そもそも仕訳が間違っている場合
売掛金の現金回収を誤って売上による現金の回収とした場合でも貸借は一致します。
誤 | (借) | 現 金 | 1,000,000円 | (貸) | 売 上 | 1,000,000円 |
正 | (借) | 現 金 | 1,000,000円 | (貸) | 売掛金 | 1,000,000円 |
(2)総勘定元帳へ転記する勘定を間違えた場合
借入による普通預金の入金を誤って総勘定元帳上、資本金の増加として処理した場合などでも貸借は一致します。
誤
(3)総勘定元帳へ逆転記した場合
利息の支払いを貸借逆に転記した場合などでも貸借は一致します。
誤
ただし利息の支払いは必ず支払利息の借方に計上されますので、誤りを発見できます。
(4)仕訳帳から総勘定元帳に転記しなかった場合
総勘定元帳に転記されていないため貸借は一致しますので、誤りを発見できません。ただし、仕訳帳の合計金額と合計試算表の合計金額の一致を確認することで転記漏れを発見できます。
(5)取引を仕訳帳に転記しなかった場合
総勘定元帳に転記するもとになる仕訳が漏れていますので、総勘定元帳に転記されることがないため貸借は一致します。また仕訳帳の合計金額と合計試算表の合計金額も一致しますので誤りを発見できません。
試算表の貸借合計が一致しないときにすべきこと
試算表の貸借合計が一致しないときは、必ずどこかで転記誤りか貸借が一致しない仕訳をしていますので、次のように試算表までの転記を逆にたどって調べます。
(1)試算表の貸借合計の計算に誤りが無いか確かめる
(2)総勘定元帳の試算表への転記に誤りが無いか確かめる
(3)総勘定元帳の貸借の合計計算に誤りが無いか確かめる
(4)仕訳帳から総勘定元帳への転記に誤りが無いか確かめる
(5)仕訳帳の仕訳に誤りが無いか確かめる
決算整理後残高試算表の作り方・書き方
試算表には3種類ありますが、試算表の主な目的は財務諸表(貸借対照表、損益計算書)の作成ですので、財務諸表の作成においては各勘定の残高が必要であるため残高試算表の作成がメインになります。そのためここからは残高試算表の作成を前提に解説します。
なおこれまでの解説は、決算整理前に作成する残高試算表であるため、決算整理前残高試算表ですが、決算整理前残高試算表に決算整理仕訳を加算することで、決算整理後残高試算表を作成します。
設例
次の決算整理前残高試算表に決算整理仕訳を追加し、決算整理誤残高試算表を作成してください。
決算整理仕訳
(借) | 仕 入 | 1,000,000円 | (貸) | 繰越商品 | 1,000,000円 |
(借) | 繰越商品 | 1,000,000円 | (貸) | 仕 入 | 1,000,000円 |
(借) | 現金過不足 | 100,000円 | (貸) | 売掛金 | 100,000円 |
(借) | 貯蔵品 | 50,000円 | (貸) | 租税公課 | 50,000円 |
(借) | 当座預金 | 3,000,000円 | (貸) | 当座借越 | 3,000,000円 |
(借) | 貸倒引当金繰入 | 100,000円 | (貸) | 貸倒引当金 | 100,000円 |
(借) | 減価償却費 | 200,000円 | (貸) | 減価償却累計額 | 200,000円 |
(借) | 未収地代 | 150,000円 | (貸) | 受取地代 | 150,000円 |
(借) | 支払利息 | 100,000円 | (貸) | 未払利息 | 100,000円 |
解答順
決算整理前残高試算表のT勘定を作成し、作成したT勘定に決算整理仕訳を反映し、反映後のT勘定を決算整理仕訳に転記します。
慣れてくれば、T勘定を作成せず、直接決算整理後残高試算表に直接転記すれば良いと思います。ただし、転記ミスを防ぐために一つの仕訳を算整理後残高試算表に転記する都度、貸借の一致は確認した方がいいでしょう。