決算振替仕訳のやり方、会計帳簿の締め方、締め切りの書き方(英米式決算法)わかりやすく 簿記3級独学講座

決算振替仕訳のやり方、英米式決算法による会計帳簿の締め方、締め切りの書き方わかりやすく解説

会計帳簿の締め切りとは、決算整理後残高試算表の作成、決算振替仕訳の後、全ての勘定の転記、記録が正しいことを検証し、総勘定元帳の全ての勘定の残高をゼロにして当期の帳簿の記入を完了させ次期につなげる手続をいいます。決算本手続における最も重要な手続です。

会計帳簿の締め方には英米式決算法と大陸式決算法がありますが、簿記3級の検定試験では英米式決算法だけが出題対象ですので、ここでは英米式決算法による会計帳簿の締め方、締め切りの書き方について解説します。

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英米式決算法による会計帳簿の締め方、締め切りの書き方

英米式決算法では、次の手順により会計帳簿の締め切りを行います。

(1)収益・費用勘定の締め切り(決算振替仕訳)
損益に関する勘定については「損益」という集合勘定を設け、決算振替仕訳により全ての費用勘定、収益勘定の残高を「損益」勘定に振り替え、この「損益」勘定において当期純利益を計算します。そして当期純利益を「損益」勘定から繰越利益剰余金勘定に振り替えます。これらの振り替えを決算振替仕訳といいます。

仕訳で示すと次のようになります。決算日は3月31日とします。
①収益勘定から損益勘定への振替

(借) 売 上 1,000,000円 (貸) 損 益 1,510,000円
(借) 受取手数料 500,000円
(借) 受取利息 10,000円

②費用勘定から損益勘定への振替

(借) 損 益 860,000円 (貸) 仕 入 600,000円
(貸) 給 料 200,000円
(貸) 消耗品費 50,000円
(貸) 支払利息 10,000円

③当期純利益の繰越利益剰余金への振替

(借) 損 益 650,000円 (貸) 繰越利益剰余金 650,000円

当期純利益は貸借対照表でみると株主資本の増加で、当期純利益は営業活動の成果ですので繰越利益剰余金の増加ですので繰越利益剰余金に振り替えます。

逆に当期純損失が発生した場合は、損益勘定は借方残高になりますので、繰越利益剰余金の減少になり、損益勘定の繰越利益剰余金への振り替えは次のようになります。

(借) 繰越利益剰余金 ×××円 (貸) 損 益 ×××円

これら3つの決算振替仕訳を総勘定元帳に転記し、すべての収益、費用勘定と損益勘定を締め切ります。

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(2)資産・負債・資本勘定の締め切り
一方、資産勘定、負債勘定、資本勘定については、決算振替仕訳は行わず、総勘定元帳上で締め切りを行います。
すなわち、総勘定元帳の貸借差額を「次期繰越」として少ない方に記載(原則として期末の日付、金額ともに赤字で記載)し、貸借を一致させ勘定を締め切ります。さらに、翌年度の期首の日付で次期繰越の反対側に「前期繰越」として翌期の開始記入を行います。

(3)繰越試算表の作成
資産・負債・資本勘定を締め切った後、貸借対照表の全ての勘定の次期繰越残高を集計して繰越試算表を作成します。
これは、貸借対照表の勘定は決算振替仕訳をせず、総勘定元帳だけで次期繰越を計算するため、この過程で転記誤りが生じていないかを確認するためです。

繰越試算表
20××年3月31日
借方 摘要 貸方
50,000円 現金
25,000円 売掛金
30,000円 繰越商品
買掛金 10,000円
借入金 20,000円
資本金 15,000円
繰越利益剰余金 60,000円
105,000円 105,000円

なお繰越試算表は、日商簿記3級においては出題の対象外です。また最近は、会計ソフトにより会計帳簿を作成するため、繰越試算表は作成されなくなりつつあります。

(4)仕訳帳の締め切り
仕訳帳は期中の取引を全て記帳した段階で一度締め切られますが、その後、決算整理仕訳、決算振替仕訳を記帳して再度締め切られます。

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決算振替仕訳、英米式決算法による帳簿締め切りの練習問題

次の決算整理仕訳後の合計試算表に基づき、決算振替仕訳および総勘定元帳の締め切り、繰越試算表の作成をしてください。なお開始記入もしてください。

決算整理後合計試算表(20××年3月31日)

勘定科目 借 方 貸 方
現金 100,000円 50,000円
普通預金 4,500,000円 1,200,000円
受取手形 300,000円 100,000円
売掛金 15,500,000円 2,000,000円
繰越商品 1,500,000円 300,000円
未収収益 720,000円
建物 110000,000円
買掛金 3,500,000円 7,000,000円
借入金 5,700,000円 9,500,000円
貸倒引当金 240,000円
減価償却累計額 800,000円
資本金 6,000,000円
繰越利益剰余金 8,500,000円
売上 1,100,000円 30,000,000円
受取手数料 1,300,000円
仕入 20,000,000円 2,400,000円
給料 5,000,000円 1,500,000円
旅費交通費 360,000円
通信費 110,000円 20,000円
租税公課 260,000円 60,000円
貸倒引当金繰入 120,000円
減価償却費 800,000円
支払利息 500,000円 100,000円
合計 71,070,000円 71,070,000円

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解答
(1)決算振替仕訳 3月31日
①収益の損益勘定への振替

(借) 売 上 28,900,000円 (貸) 損 益 30,200,000円
(借) 受取手数料 1,300,000円

②費用の損益勘定への振替

(借) 損 益 23,070,000円 (貸) 仕 入 17,600,000円
(貸) 給 料 3,500,000円
(貸) 旅費交通費 360,000円
(貸) 通信費 90,000円
(貸) 租税公課 200,000円
(貸) 貸倒引当金繰入 120,000円
(貸) 減価償却費 800,000円
(貸) 支払利息 400,000円

③当期純利益の繰越利益剰余金への振替

(借) 損 益 7,130,000円 (貸) 繰越利益剰余金 7,130,000円

(2)総勘定元帳の締め切り、開始記入



(3)繰越試算表

繰越試算表
20××年3月31日
借方 摘要 貸方
50,000円 現金
3,300,000円 普通預金
200,000円 受取手形
13,500,000円 売掛金
1,200,000円 繰越商品
720,000円 未収収益
11,000,000円 建物
買掛金 3,500,000円
借入金 3,800,000円
貸倒引当金 240,000円
減価償却累計額 800,000円
資本金 6,000,000円
繰越利益剰余金 15,630,000円
29,970,000円 29,970,000円