為替手形とは?為替手形の仕組み、関連する取引、仕訳例~簿記3級 独学のための講座

為替手形とは?為替手形の仕組み、関連する取引、仕訳例

為替手形とは、手形の振出人が支払人に対して、受取人に支払いをするよう依頼する証券です。略して為手とも言います。

約束手形との違いは、手形取引にかかわる人数と支払人です。

約束手形は振出人と受取人の二者間で利用され、手形の振出人が支払人になり、受取人に支払います。

一方、為替手形は振出人と支払人と受取人の三者間でのやり取りが基本で、手形の作成者である振出人と支払人が異なります。振出人を差出人、支払人を名宛人または引受人、受取人を指図人と言い、差出人または指図人は名宛人(引受人)に手形を呈示し、支払いの承諾を求めます。名宛人(引受人)が支払いを承諾することを「引受け」と言います。

このようなことから、為替手形を振り出すには、差出人(振出人)が名宛人(引受人)に対して債権を所有していることが前提になります。

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なお手形法第一条により為替手形には次のことを記載することが求められています。

1.為替手形であることを示す文字
2.支払人の名前
3.満期日
4.支払地
5.受取人またはその指図人
6.振出日
7.振出地
8.振出人の署名

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為替手形の仕訳

振出人は名宛人の引き受けの承諾を得て為替手形を振り出したときに、売掛金勘定の貸方に記帳します。
支払人(名宛人)は、為替手形を引き受けた時に、買掛金勘定の借方と支払手形勘定の貸方に記帳します。
受取人は、為替手形を受け取ったときに、受取手形勘定の借方に記帳します。

取引、仕訳例1
B株式会社はA株式会社より商品800,000円を仕入れ、その代金の支払いとして売掛金のあるC株式会社宛の引受けの承諾を得て為替手形を振り出し、B株式会社に渡した。
A株式会社

(借) 仕 入 800,000円 (貸) 売掛金 800,000円

B株式会社

(借) 受取手形 800,000円 (貸) 売 上 800,000円

C株式会社

(借) 買掛金 800,000円 (貸) 支払手形 800,000円

取引、仕訳例2
4月1日にA株式会社はB株式会社に商品1,000,000円を販売した。
4月11日にA株式会社はC株式会社より商品1,000,000円を仕入れた。
4月30日にA株式会社はC株式会社に対する買掛金の支払いとして、B株式会社の引受けを得て為替手形を振り出し、C株式会社に渡した。

4月1日
A株式会社

(借) 売掛金 1,000,000円 (貸) 売 上 1,000,000円

B株式会社

(借) 仕 入 1,000,000円 (貸) 買掛金 1,000,000円

4月11日
A株式会社

(借) 仕 入 1,000,000円 (貸) 買掛金 1,000,000円

C株式会社

(借) 売掛金 1,000,000円 (貸) 売 上 1,000,000円

4月30日
A株式会社

(借) 買掛金
(C株式会社)
1,000,000円 (貸) 売掛金
(B株式会社)
1,000,000円

B株式会社

(借) 買掛金
(A株式会社)
1,000,000円 (貸) 支払手形 1,000,000円

C株式会社

(借) 受取手形 1,000,000円 (貸) 売掛金
(A株式会社)
1,000,000円

約束手形が決済された時の仕訳

手形記載の金額の支払日を満期日もしくは支払期日といい、為替手形の満期日には名宛人(引受人)の当座預金から手形記載の金額が引き落とされ、手形の受取人の当座預金に入金されます。
よって手形の満期日に名宛人(引受人)は支払手形を借方に記帳し、受取人は受取手形の貸方に記帳します。

取引、仕訳例1
為替手形の満期日にC株式会社引受け、受取人B株式会社の800,000円の手形が決済された。

B株式会社

(借) 当座預金 800,000円 (貸) 受取手形 800,000円

C株式会社

(借) 支払手形 800,000円 (貸) 当座預金 800,000円

取引、仕訳例2
10月31日にB株式会社の引受け、C株式会社受取の1,000,000円の為替手形が決済された。

B株式会社

(借) 当座預金 1,000,000円 (貸) 受取手形 1,000,000円

C株式会社

(借) 支払手形 1,000,000円 (貸) 当座預金 1,000,000円

為替手形の裏書とは?裏書譲渡の仕組み、仕訳

為替手形の裏書とは、手形の権利を他人に譲渡することです。手形の権利を譲渡することで手形の満期日を待たずに資金を確保できます。

手形を譲渡する時、手形の裏に必要事項を記入するため、これを手形の裏書譲渡といい、手形を譲渡した人を裏書人、裏書手形の受取人を被裏書人といいます。

為替手形の裏書譲渡の仕組み

為替手形の裏書譲渡の仕組みは約束手形の裏書譲渡の仕組みと同じです。

為替手形の裏書譲渡の仕訳

為替手形の裏書譲渡の仕訳は約束手形の裏書譲渡の仕訳と同じです。

為替手形の裏書人は手持ちの手形を裏書し、被裏書人に渡したときに、「受取手形」勘定の貸方に記載し、被裏書人は、裏書された手形を受け取ったときに、「受取手形」勘定の借方に記載します。

手形の裏書譲渡は受取人が変わるだけですので、為替手形の支払人は仕訳をする必要がありません。

取引、仕訳例
5月1日にD株式会社はE株式会社に商品1,500,000円を販売した。
5月11日にD株式会社はF株式会社より商品1,500,000円を仕入れた。
5月30日にD株式会社はF株式会社に対する買掛金の支払いとして、E株式会社の引受けを得て為替手形を振り出し、F株式会社に渡した。
6月10日にF株式会社はG株式会社に対する仕入れ代金1,500,000円の支払いとして、D株式会社より受け取った1,500,000円の為替手形をG株式会社に裏書譲渡した。

5月1日
D株式会社

(借) 売掛金 1,500,000円 (貸) 売 上 1,500,000円

E株式会社

(借) 仕 入 1,500,000円 (貸) 買掛金 1,500,000円

5月11日
D株式会社

(借) 仕 入 1,500,000円 (貸) 買掛金 1,500,000円

F株式会社

(借) 売掛金 1,500,000円 (貸) 売 上 1,500,000円

5月30日
D株式会社

(借) 買掛金
(F株式会社)
1,500,000円 (貸) 売掛金
(E株式会社)
1,500,000円

E株式会社

(借) 買掛金
(D株式会社)
1,500,000円 (貸) 支払手形 1,500,000円

F株式会社

(借) 受取手形 1,500,000円 (貸) 売掛金
(D株式会社)
1,500,000円

6月10日
F株式会社(裏書人)

(借) 買掛金
(G株式会社)
1,500,000円 (貸) 受取手形
(E株式会社)
1,500,000円

G株式会社(被裏書人、受取人)

(借) 受取手形 1,500,000円 (貸) 売掛金
(F株式会社)
1,500,000円

E株式会社(支払人)
裏書譲渡は受取人が変わるだけのため、支払人は仕訳なし。

自己振出の為替手形が裏書譲渡され受け取った時の仕訳

自分が振り出した為替手形の裏書譲渡が繰り返され、自分に裏書譲渡されることがあります。

為替手形の振出人は支払人ではありません。そのため、自分が振り出した手形を裏書譲渡された時は、振出人は支払人から手形代金を受け取る権利を得たことになります。

よって自己振出の為替手形を裏書譲渡された時は受取手形勘定の借方に記帳することになります。

取引、仕訳例
7月1日にH株式会社はI株式会社に商品2,000,000円を販売した。
7月11日にH株式会社はJ株式会社より商品2,000,000円を仕入れた。
7月31日にH株式会社はJ株式会社に対する買掛金の支払いとして、I株式会社の引受けを得て為替手形を振り出し、J株式会社に渡した。
10月10日にH株式会社はK株式会社に商品2,000,000円を売上げ、7月31日に自分が振り出した2,000,000円の為替手形を受け取った。

7月1日
H株式会社

(借) 売掛金 2,000,000円 (貸) 売 上 2,000,000円

I株式会社

(借) 仕 入 2,000,000円 (貸) 買掛金 2,000,000円

7月11日
H株式会社

(借) 仕 入 2,000,000円 (貸) 買掛金 2,000,000円

J株式会社

(借) 売掛金 2,000,000円 (貸) 売 上 2,000,000円

7月31日
H株式会社

(借) 買掛金
(J株式会社)
2,000,000円 (貸) 売掛金
(I株式会社)
2,000,000円

I株式会社

(借) 買掛金
(H株式会社)
2,000,000円 (貸) 支払手形 2,000,000円

J株式会社

(借) 受取手形 2,000,000円 (貸) 売掛金
(H株式会社)
2,000,000円

10月10日
H株式会社

(借) 受取手形 2,000,000円 (貸) 売 上 2,000,000円

K株式会社(裏書人)

(借) 仕 入 2,000,000円 (貸) 受取手形 2,000,000円

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