無形固定資産とは?取得、売却・除却、減価償却の会計処理、仕訳
無形固定資産とは、具体的な形はないものの有形固定資産と同じように所有することで経済的な便益を得ることができる資産をいいます。
無形固定資産には、特許権や商標権などの法律上の権利やソフトウエアやのれんといった経済上の価値があります。
無形固定資産の種類
法律・契約上の権利
特許権 | 特許を受けた発明の独占排他権 |
商標権 | 商品又はサービスで使用する商標の独占排他権 |
借地権 | 土地を借りて使用する権利 |
鉱業権 | 一定の区域において鉱物を採掘し取得できる権利 |
実用新案権 | 物の形や構造、組み合わせの考案を保護する権利 |
意匠権 | 物や画像のデザインの独占排他権 |
電話加入権 | 電話回線の設置に必要な権利 |
経済上の価値
ソフトウエア | コンピュータを動かすために命令を出すプログラム |
のれん | ブランド、ノウハウなど企業の超過収益力を資産化したもの |
無形固定資産の取得時の会計処理、仕訳
無形固定資産を取得したときは、取得に要した支出額を取得原価とします。
特許権など法律・契約上の権利である無形固定資産を取得したとき
法律・契約上の権利は金銭を支払って取得しますので、取得に要した全ての支出額を取得原価とします。
のれんを取得したとき
のれんが無形固定資産として計上されるのは、他の企業を構成する事業の全部または一部を取得する事業の譲り受けや合併など有償取得したときに限られます。
事業の譲り受けや合併に要した金額が、相手企業の純資産を超える部分が「のれん」として資産計上されます。
(借) | 資 産 | 100,000円 | (貸) | 負 債 | 40,000円 |
(借) | のれん | 20,000円 | (貸) | 現金預金 | 80,000円 |
なお、事業の譲り受けに要した金額が譲り受けた事業の純資産を下回った場合は、負ののれんとして一時に収益計上されます。
(借) | 資 産 | 100,000円 | (貸) | 負 債 | 40,000円 |
(貸) | 現金預金 | 40,000円 | |||
(貸) | 負ののれん発生益 | 20,000円 |
ソフトウエアを取得したとき
社内利用目的でソフトウエアを購入し、そのソフトウエアの利用により将来の収益獲得または費用削減が確実に認められる場合は、取得に要した全ての支出額を取得原価とします。
(簿記2級では、ソフトウエアの取得により収益獲得または費用削減効果が確実に認められると考えます。また自社の社内利用目的のソフトウエアだけが出題範囲となっています。)
なお、社内利用目的の開発を外部に依頼し、開発が長期にわたる場合、ソフトウエアの引き渡しを受ける前に制作代金の全部または一部を支払うことがありますが、この場合、支払額をソフトウエア仮勘定で記帳します。そしてソフトウエアが完成し引き渡しを受けたときに、ソフトウエア勘定に振り替えします。
設例
社内利用目的のソフトウエア10,000円の開発を外注し、開発が長期にわたるために契約時に4,000円を普通預金から支払い、残金はソフトウエア引取時に普通預金から支払うこととした。
契約時
(借) | ソフトウエア仮勘定 | 4,000円 | (貸) | 普通預金 | 4,000円 |
ソフトウエア受取時
(借) | ソフトウエア | 10,000円 | (貸) | ソフトウエア仮勘定 | 4,000円 |
(貸) | 普通預金 | 6,000円 |
無形固定資産の減価償却
有形固定資産と同様、無形固定資産についても法定の償却期間にわたり償却を行い、無形固定資産の取得原価を各事業年度に配分します。
無形固定資産の償却方法、耐用年数、残存価額
社内利用目的のソフトウエアは、残存価額をゼロとした定額法により原則5年以内の期間で償却します。
法律上・契約上の権利は、残存価額をゼロとした定額法により法律・契約に定める有効期間にわたり償却します。
のれんは、20年以内の有効期間にわたり残存価額をゼロとした定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。
いずれの無形固定資産についても償却は直説法により記帳します。間接法による記帳は認められません。
また、償却額は減価償却費勘定ではなく、「ソフトウエア償却」など無形固定資産の勘定科目名に償却を付けた「○○償却」という勘定科目で処理し、原則として販売費および一般管理費の区分に計上します。
(借) | ソフトウエア償却 | ×××円 | (貸) | ソフトウエア | ×××円 |
無形固定資産の売却、除却
無形固定資産の売却
売却時の帳簿価額と売却価額の差額を固定資産売却損または固定資産売却益として処理します。
設例
意匠権(取得原価100,000円、帳簿価額40,000円)を60,000円で売却し、現金を受け取った。
(借) | 現金 | 60,000円 | (貸) | 意匠権 | 40,000円 |
(貸) | 固定資産売却益 | 20,000円 |
無形固定資産の除却
無形固定資産を除却したときは除却時の簿価で固定資産除却損を計上します。
設例
20×3年1月に取得した社内利用ソフトウエア(取得原価600,000円)を20×5年8月に除却した。社内利用目的のソフトウエアの耐用年数は5年とします。
(借) | 固定資産除却損 | 280,000円 | (貸) | ソフトウエア | 280,000円 |
20×3年1月~20×5年8月まで32ヶ月経過しているため、除却時の帳簿価額は
600,000円×(60ヶ月-32ヶ月)/60ヶ月=280,000円