リース取引とは?ファイナンスリース取引、オペレーティングリース取引の会計処理、仕訳 商業簿記2級独学講座

リース取引とは?リース取引の会計処理、仕訳

リース取引とは、特定の物件の所有者である貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用する権利を与え、借手は、合意された使用料(リース料)を貸手に支払う取引をいいます。

リース取引は、法的には賃貸借取引ですが、契約条件によっては実質はお金を借りて固定資産を購入する取引と同じものがあり、その場合は会計処理も借入をして固定資産を購入した時と同じようなものになります。

簿記2級の検定においてはリース資産の借手の会計処理、仕訳が学習範囲になりますので、ここではリース資産の借手の会計処理、仕訳について解説します。

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リース取引の分類

リース取引は、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引に分けられます。

またファイナンスリース取引は、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの(所有権移転ファイナンスリース取引)と、それ以外の取引(所有権移転外ファイナンスリース取引)に分けられますが、簿記2級の検定では、所有権移転外ファイナンスリース取引について学習します。

ファイナンスリース取引

ファイナンスリース取引とは、(1)リース契約に基づくリース期間の途中においてリース契約を解除できないリース取引又はこれに準ずる(解約不能(ノンキャンセラブル))リース取引で、(2)借手がリース契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、リース物件の使用によって生じるコストを実質的に負担する(フルペイアウト)という2つの要件を満たすリース取引をいいます。

(1)解約不能(ノンキャンセラブル)
①契約上、解約することができないリース取引
②契約上は解約可能でも、解約に際し、次のような相当の違約金を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引
・解約時に未経過リース期間のリース料の概ね全額を支払うこととされているリース取引
・解約時に未経過リース期間のリース料から借手の負担に帰属しない未経過のリース期間に係る利息等として差し引いた額の概ね全額を支払うこととされているリース取引

(2)フルペイアウト
「リース契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」とは、リース物件を自己所有するならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受することをいいます。
また「リース物件の使用によって生じるコストを実質的に負担する」とは、リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することをいいます。

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所有権移転外ファイナンスリース取引の借手の会計処理、仕訳

所有権移転外ファイナンスリース契約時の借手の会計処理、仕訳

ファイナンスリース取引であれば、所有権移転外であっても、借手はリース物件を実質的に所有しているのと同様の経済的効果があるため、借手は原則としてリース物件を通所の売買取引に準じた方法で会計処理します。

すなわち、リース物件の借手は、リース取引の開始日にリース会社からリース物件を購入し、購入代金を分割払いする取引として仕訳します。

(借) リース資産 ×××円 (貸) リース債務 ×××円

リース資産は、原則として、有形固定資産、無形固定資産の別に、一括してリース資産として表示しまが、有形固定資産、無形固定資産の各科目に含めて表示することもできます。

リース債務については、1年基準により流動負債と固定負債に分けて表示します。

(少額リース資産及び短期リース取引に関する簡便的な取扱い)
所有権移転外ファイナンスリース取引において、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができます。
個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次の(1)から(3)のいずれかを満たす場合です。

(1) リース料総額が購入時に費用処理する方法が採用されている重要性が乏しい減価償却資産額以下のリース取引
なお、リース料総額にはリース物件の取得価額のほかに利息相当額が含まれていますので、その基準額は企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができます。また、この基準額は、リース契約に複数のリース物件が含まれる場合は、契約に含まれる物件の単位ごとに適用できます。

(2) リース期間が 1 年以内のリース取引

(3)リース契約 1 件当たりのリース料総額が 300万円以下のリース取引
維持管理費用相当額や通常の保守等の役務提供相当額がリース料総額に占める割合が重要な場合は、その合理的見積額を除くことができます。

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リース資産及びリース債務の計上額、リース料支払時の会計処理、仕訳

リース期間は、長期になることから、ファイナンスリース取引のリース料には一定の利息(貸手の利益)が含まれ、そのためリース料総額はリース物件の現金購入価額より高くなっています。

そのため、リース資産及びリース債務の計上額を決める際に利息の処理が問題となりますが、この利息の処理方法として、(1)利子抜き法(原則)と(2)利子込み法の2つの方法が認められています。

(1)利子抜き法
リース契約で合意されたリース料総額から利息相当額を控除した金額(見積現金購入価額)をリース資産、リース債務として計上する方法です。
リース料の支払時には、リース債務を減額するとともに支払利息を認識します。支払利息は支払ったリース料と減額したリース債務の差額になります。

利息相当額の総額のリース期間の各期への配分は、簿記2級の検定では、定額法(リース期間にわたり均等額を配分する方法)になります。

(借) リース債務 ×××円 (貸) 現金預金 ×××円
(借) 支払利息 ×××円

なお、決算日において支払利息相当額の未払い分がある場合、未払利息を計上する必要があります。

(借) 支払利息 ×××円 (貸) 未払利息 ×××円

(2)利子込み法
リース契約で合意されたリース料総額をリース資産、リース債務として計上する方法です。利息相当額はリース資産、リース債務から控除しません。
リース料の支払時には、リース債務を減額するだけになり、支払利息を認識することはありません。

(借) リース債務 ×××円 (貸) 現金預金 ×××円

(利子抜き法における利息相当額の各期への配分)
利息相当額の総額のリース期間の各期への配分方法は、原則として、利息法になります。
利息法とは、各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する方法で、当該利率は、リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率になります。


(利子抜き法における利息相当額の各期への配分方法として定額法を採用できる場合、利子込み法でリース資産、リース債務を計上できる場合)
利子抜き法における利息相当額の各期への配分方法として定額法を採用できる場合、利子込み法でリース資産、リース債務を計上できる場合とは、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合になります。
ここで、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過リース料の期末残高(リース取引を通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理したものや、利息相当額を利息法により処理しているリース資産に係るものを除く。)の、当該期末残高と有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に対する割合が 10 パーセント未満である場合です。

ファイナンスリース資産の償却

リース資産の減価償却は、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして計算します。償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から実態に応じたものを選択適用します。

(借) 減価償却費 ×××円 (貸) リース資産減価償却累計額 ×××円

実務においては、減価償却の耐用年数は、ファイナンスリース取引の判定においてリース期間終了後の再リース期間をリース期間に含めている場合は、再リース期間を耐用年数に含めます。また、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、原則として、当該残価保証額を残存価額とします。

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所有権移転外ファイナンスリース取引 設例

設例1
20×1年4月1日に、下記の条件で営業車のリース契約を締結し、リース取引を開始した。
リース契約は、所有権移転外ファイナンスリース取引と判定された。
会計期間は4月1日から3月31日とする。
20×1年4月1日から20×2年3月31日までの仕訳を(1)利子抜き法、(2)利子込み法により示せ。
[リース条件]
1.リース期間:6年
2.リース料:年額900,000円
3.リース料支払日:毎年3月末
4.リース資産の見積現金購入価額:4,500,000円
5.減価償却方法:リース期間を耐用年数とする定額法(残存価額ゼロ)

(1)利子抜き法
20×1年4月1日(リース契約、リース取引開始日)

(借) リース資産 4,500,000円 (貸) リース債務 4,500,000円

20×2年3月31日(普通預金からリース債務支払、決算)

(借) リース債務 750,000円 (貸) 普通預金 900,000円
(借) 支払利息 150,000円
(借) 減価償却費 750,000円 (貸) リース資産減価償却累計額 750,000円

(2)利子込み法
20×1年4月1日(リース契約、リース取引開始日)

(借) リース資産 5,400,000円 (貸) リース債務 5,400,000円

20×2年3月31日(普通預金からリース債務支払、決算)

(借) リース債務 900,000円 (貸) 普通預金 900,000円
(借) 減価償却費 900,000円 (貸) リース資産減価償却累計額 900,000円

設例2
20×1年7月1日に、下記の条件で機械装置のリース契約を締結し、リース取引を開始した。
リース契約は、所有権移転外ファイナンスリース取引と判定された。
会計期間は4月1日から3月31日とする。
20×1年4月1日から20×2年3月31日までの仕訳を(1)利子抜き法、(2)利子込み法により示せ。
[リース条件]
1.リース期間:5年
2.リース料:年額360,000円
3.リース料支払日:毎年6月末、12月末(それぞれ180,000円ずつの支払)
4.リース資産の見積現金購入価額:1,500,000円
5.減価償却方法:リース期間を耐用年数とする定額法(残存価額ゼロ)

(1)利子抜き法
20×1年7月1日(リース契約、リース取引開始日)

(借) リース資産 1,500,000円 (貸) リース債務 1,500,000円

20×1年12月31日(普通預金からリース債務支払)

(借) リース債務 150,000円 (貸) 普通預金 180,000円
(借) 支払利息 30,000円

20×2年3月31日(決算)

(借) 減価償却費 225,000円 (貸) リース資産減価償却累計額 225,000円
(借) 支払利息 15,000円 (貸) 未払利息 15,000円

(2)利子込み法
20×1年7月1日(リース契約、リース取引開始日)

(借) リース資産 1,800,000円 (貸) リース債務 1,800,000円

20×1年12月31日(普通預金からリース債務支払)

(借) リース債務 180,000円 (貸) 普通預金 180,000円

20×2年3月31日(決算)

(借) 減価償却費 270,000円 (貸) リース資産減価償却累計額 270,000円

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オペレーティングリース取引

オペレーティングリース取引とは、ファイナンスリース取引以外のリース取引をいいます。

オペレーティングリース取引の会計処理、仕訳

オペレーティングリース取引は、通常の賃貸借取引と同じ会計処理、仕訳を行います。

すなわち、リース契約時には会計処理、仕訳はせず、リース料の支払い時に「支払リース料」を計上し、リース料の支払日と決算日が異なる時は、決算日に「支払リース料」を計上するとともに、「未払リース料」を計上します。

設例
20×1年5月1日に営業用自動車のリース契約を下記の条件で結び、リース取引を開始した。このリース取引は、オペレーティングリース取引、会計期間は4月1日から3月31日である。

[リース条件]
1.リース期間:5年
2.リース料総額: 600,000円
3.リース料支払日:毎月月末後払い(普通預金から引き落とし)
4.リース資産の見積現金購入価額:500,000円
5.リース資産の経済的耐用年数:6年

20×1年5月1日(リース開始日)
仕訳無し

20×1年5月31日

(借) 支払リース料 10,000円 (貸) 普通預金 10,000円

20×1年6月30日から20×2年3月31まで毎月末日に下記の仕訳

(借) 支払リース料 10,000円 (貸) 普通預金 10,000円

20×2年3月31日(決算仕訳)
仕訳無し
リース資産を計上していませんので、減価償却費の計上はありません。また、リース料の支払日と決算日が同じですので、未払リース料の計上もありません。