現金出納帳・金銭出納帳の書き方、締め方
現金出納帳は補助元帳ですので、必ず作成する必要があるわけではありませんが、現金は盗難や紛失、不正に合いやすく、さらに業種によっては取引額、取引回数も多いため、仕訳、総勘定元帳への記帳漏れを防ぐ観点からもほとんどの企業で作成されています。
また、支店や店舗が複数ある場合で、それぞれに現金を保管している場合、日々の現金の実際残高を総勘定元帳と照合するのは難しいため現金出納帳を支店や店舗ごとに作成し、現金の管理をしています。
なお、金銭出納帳とは現金出納帳のことです。簿記の検定試験では現金出納帳と表現されますので、ここでは現金出納帳に統一して表現します。
現金出納帳の書き方・締め方、記入上の注意
(1)日付欄
現金取引の発生月日を日付順に記入します。同じページで月が同じであれば日付だけを記入します。日付が同じであれば「〃」を記入します。
なお、摘要欄と金額については、同じでも「〃」を使用しません。
(2)摘要欄
相手勘定、取引相手、取引内容を簡潔に記載します。
会社設立月や事業開始月以外は、毎月の1日の1行目は、必ず「前月繰越」とします。
(3)収入欄
入ってきた現金の金額を記載します。社外からの入金だけでなく、預金を現金で出金することによる現金の増加についても記載します。
月初の摘要欄に前月繰越を記載した行には、前月からの繰越金額を記載します。
(4)支出欄
出ていった現金の金額を記載します。社外への出金だけでなく、現金を預金に入金することによる現金の減少についても記載します。
月末の摘要欄に次月繰越を記載した行には、月末残高(次月への繰越金額)を記載します。
(5)残高欄
現金の毎日の実際残高を記載します。
現金の出入りは必ず毎日現金出納帳に記載し、毎日の最後に現金残高を数え、現金出納帳の残高と照合します。
不一致の場合は、現金出納帳の残高が実際残高に合うよう調整します。
(6)締め方
現金出納帳は必ず毎月末に締めます。
- ① 摘要欄に「合計」と記載し、その行に収入欄と支出欄の合計を記載します。
- ② 摘要欄に「次月繰越」と記載し、その行の支出欄に現金の月末残高を記載します。この行の日付、摘要、金額は基本的に赤字で記載します。
- ③ ②の次の行に、①の額と②の額の合計額を収入欄、支出欄に記載します。収入欄、支出欄の金額の一致を確認します。
- ④ 翌月初の記入として、次月の1日の行を設け、摘要欄に「前月繰越」と記載し、収入欄と残高欄に繰越額(前月末の残高)を記載します。
現金出納帳の書き方・締め方例題
次の取引を現金出納帳に記載してください。
なお、毎月の取引合計の行は設けないものとします。
7月1日 | 資本金として普通預金に1,000,000円を入金し会社を設立した。 |
2日 | 手持ち現金として普通預金から700,000円を出金した。 |
3日 | 商品を300,000円仕入れ、現金で支払った。 |
10日 | 3日に仕入れた商品のうち半分を500,000円で売り上げ、掛けとした。 |
15日 | 交通費として5,000円を支払った。 |
20日 | 売掛金500,000円を現金で回収した。 |
25日 | 給料350,000円を現金で支払った。 |
8月1日 | 新店の敷金として100,000円を支払った。 |
5日 | 商品を350,000円で仕入れ掛けとした。 |
6日 | 商品を200,000円で販売し、現金を受け取った。 |
13日 | 商品を600,000円で販売し、半額は販売先振り出しの小切手、半額は現金を受け取った。 |
21日 | 5日に仕入れた商品の掛代金350,000円を支払った。 |
24日 | 給与の支払いに備え、普通預金に300,000円入金した。 |
9月7日 | 配当金30,000円を配当金領収証で受け取った。 |
9日 | 商品1,000,000円を仕入れ、小切手を振り出した。 |
12日 | 商品を1,500,000円で販売し、掛けとした。 |
22日 | 売掛金1,500,000円のうち半額は販売先振り出しの小切手、半額は自己振り出しの小切手で回収した。 |
24日 | 保有する国債の利札10,000円の期日が到来した。 |
26日 | 小口現金勘定を設けることとし、普通預金から現金100,000円を引き出し、用度係に渡した。 |
30日 | 用途係から20,000円の支払い報告を受け、20,000円を小口現金へ支払い。 |
30日 | 現金の実際残高が1,360,000円で、差異原因が不明だったため、5,000円は雑費とした。 |
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- 7月1日、10日、8月5日、9月9日、12日、の取引は現金が増減しませんので、現金出納帳には記載しません。
- 8月13日:受け取った販売先振り出し小切手300,000円は他人振出小切手として、簿記では現金になりますので、現金受領額300,000円とともに、現金出納帳に600,000円で記載しています。
- 9月7日:配当金受領書は、簿記では現金になりますので、現金出納帳に記載します。
- 9月22日:自己振り出しの小切手750,000円の受取は、当座預金の増加になりますので、販売先振り出しの小切手750,000円だけを現金出納帳既記載します。
- 9月24日:期日到来した国債の利札は、簿記では現金となりますので、現金出納帳に記載します。
- 9月30日:現金の実際残高と現金出納帳の残高が異なる(現金過不足の発生)時は現金出納帳の残高を実際残高に合わせる調整をします。