減価償却費計算方法(定額法200%定率法生産高比例法)記帳方法(直説法間接法)商業簿記2級独学講座

減価償却費計算方法(定額法、200%定率法、生産高比例法)、減価償却費の記帳方法(直接法、間接法)

減価償却とは、費用配分の原則に基づいて利用や時の経過による固定資産の価値の低下を見積もり、取得原価を一定期間にわたり各事業年度に費用(減価償却費)として配分する手続きをいい、価値の減少を客観的に把握することは難しいため、一定の仮定に基づき価値の減少を把握します。

これは、減価償却の最も重要な目的が適正な費用配分を行なうことで毎期の損益計算を正確にすることであり、利益におよぼす影響を顧慮して減価償却費を意図的に増減することは、損益計算をゆがめるものとして認められず、あらかじめ定めた減価償却方法に従い、計画的、規則的に実施される必要があります。

ただし、土地は使用しても価値は減少せず、建設仮勘定は使用していないので、いずれも減価償却をしません。

多くの固定資産は物質的原因又は機能的原因によって価値が減少しますが、物質的な価値の減少は利用や時の経過による磨滅損耗を原因とするもの、機能的な価値の減少は物質的にはまだ使用できても外的事情により陳腐化、不適応化したことを原因とするものです。

固定資産の価値減少が主に時の経過を原因として発生する場合には、期間を配分基準とする方法(定額法や定率法)が合理的であり、固定資産の価値減少が主に固定資産の利用に比例して発生するものである場合は、利用や生産高(生産高比例法)を配分基準とするのが合理的です。

ここでは、減価償却の簿記2級の学習範囲である定額法、定率法、生産高比例法を、また減価償却の記帳方法である直説法と間接法を解説します。

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定額法

減価償却の定額法とは、固定資産の耐用年数に渡り、毎期均等額の減価償却費を計上する方法です。
なお、固定資産の耐用年数が到来したときには残存価額だけ固定資産の価値が残っているため、残存価額分は減価償却しません。減価償却する部分(取得原価から残存価額を控除した金額)を要償却額といいます。

1年分の減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数

税法においては、2007年4月1日以降に取得した有形固定資産については、残存価額を1円(備忘価額)とし、取得原価から1円を控除した額を要償却額としています。

会計期間の初月に固定資産を取得(使用開始)したときは、毎年の減価償却費は同じになりますが、会計期間の途中で固定資産を取得(使用開始)したときは、取得(使用開始)年度の減価償却費は取得(使用開始)した月から決算までの月数により月割で減価償却費を計算します。
月の途中で固定資産を取得(使用開始)しても、実務では月の初めから使用したとみなして減価償却費を計算します。簿記検定においては問題文の指示に従います。

期中取得した時の減価償却費=1年分の減価償却費×使用開始月から決算日までの月数÷12か月

設例
20×1年5月13日に本社建物を5,000,000円で現金で購入し、使用を開始した。
会計期間:1月1日から12月31日、残存価額:取得原価の10%、耐用年数:10年、償却方法:定額法として、20×1年の決算での減価償却費(月割計算)を仕訳する。

(借) 減価償却費 300,000円 (貸) 減価償却累計額 300,000円

※ (5,000,000円-5,000,000円×10%)÷10年×8か月÷12か月=300,000円

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定率法

減価償却の定率法とは、固定資産の耐用年数に渡り、毎期期首未償却残高(期首取得原価-期首減価償却累計額)に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法です。
未償却残高は時の経過とともに減少するため、減価償却費は耐用年数初期に近いほど多額に計上され、年数の経過とともに逓減します。

1年分の減価償却費=期首未償却残高(期首取得原価-期首減価償却累計額)×年償却率

設例
20×1年4月10日に本社建物を5,000,000円で現金で購入し、使用を開始した。
会計期間:1月1日から12月31日、耐用年数:10年、償却方法:定率法、償却率:0.206として、20×1年、20×2年の決算での減価償却費を仕訳する。

20×1年12月決算

(借) 減価償却費 772,500円 (貸) 減価償却累計額 772,500円

※ 5,000,000円×0.206×9か月÷12か月=772,500円

20×2年12月決算

(借) 減価償却費 870,865円 (貸) 減価償却累計額 870,865円

※ (5,000,000円-772,500円)×0.206=870,865円

20×3年12月決算

(借) 減価償却費 691,466円 (貸) 減価償却累計額 691,466円

※ (5,000,000円-772,500円-870,865円)×0.206=691,466円

なお、上記の減価償却方法は耐用年数経過時に未償却残高が概ね取得原価の10%残る方法です。

200%定率法

一方、税法では2012年4月1日以降に取得した固定資産を定率法で償却する場合、200%定率法を適用することとされています。

これは、定率法による減価償却費が、取得原価を耐用年数で除した額の2倍の減価償却費が計算されるように定率法の償却率とする方法です。例えば耐用年数10年とすると償却率は0.2(1÷10年×2)、耐用年数8年とすると償却率は0.25(1÷8年×2)になります。

さらに200%定率法は、耐用年数経過時に残存価額をゼロ円(実際は備忘価額の1円)とする定率法ですが、定率法では一定の帳簿価額が残るため耐用年数到来時まで償却しても帳簿価額がゼロにはなりません。

そこで、毎年の減価償却費に償却保証額が設けられ、

期首未償却残高×償却率<償却保証額(取得原価×保証率)

となる場合は、その年度の期首の未償却残高(改定取得原価)に改訂償却率を乗じた額をその年度以降の減価償却費となるよう均等償却に切り替え、残存価額が1円になるまで償却します。

この均等償却への切り替えのタイミングの決定と、切り替え後の減価償却費を算定するために耐用年数ごとに保証率と改定償却率が定められています。

例えば、20×1年期首に建物(取得原価1,000,000円、耐用年数8年)を取得し、200%定率法で減価償却を行うとします。
耐用年数8年の200%定率法の償却率は0.25、保証率は0.07909(償却保証額79,090円(=取得原価1,000,000円×保証率0.07909))、改定償却率は0.334です。

20×1年減価償却費 250,000円(=1,000,000×0.25)>償却保証額79,090円
20×2年減価償却費 187,500円(=(1,000,000-250,000円)×0.25)>償却保証額79,090円
20×3年減価償却費 140,625円(=(1,000,000-250,000円-187,500円)×0.25)>償却保証額79,090円
20×4年減価償却費 105,468円(=(1,000,000-250,000円-187,500円-140,625円)×0.25)>償却保証額79,090円
20×5年減価償却費 79,101円(=(1,000,000-250,000円-187,500円-140,625円-105,468円)×0.25)>償却保証額79,090円
20×6年減価償却費 59,326円(=(1,000,000-250,000円-187,500円-140,625円-105,468円-79,101円)×0.25)<償却保証額79,090円
20×6年の本来の減価償却の方法で計算された59,326円は償却保証額79,090円を下回りますので、20×6年以降の減価償却費は改定取得原価(期首の未償却残高)237,306円に改訂償却率0.334を乗じた79,260円となります。
20×6年減価償却費 79,260円
20×7年減価償却費 79,260円
20×8年減価償却費 78,785円※
※ 償却最終年の20×8年の計算上の償却限度額は79,260円ですが、実際の償却限度額は残存価額を1円とした未償却残高になりますので、78,785円(=1,000,000円1,000,000-250,000円-187,500円-140,625円-105,468円-79,101円-79,260円-79,260円-1円)になります。

設例
20×1年期首に建物(取得原価2,000,000円、耐用年数5年)を取得し、200%定率法で減価償却を行うとします。耐用年数5年の200%定率法の保証率は0.10800、改定償却率は0.500です。
20×1年から20×5年までの各決算時における減価償却の仕訳。

20×1年決算時

(借) 減価償却費 800,000円 (貸) 減価償却費累計額 800,000円

※2,000,000円×0.4(1÷5年×2)=800,000円>償却保証額216,000円(取得原価2,000,000円×保証率0.10800)

20×2年決算時

(借) 減価償却費 480,000円 (貸) 減価償却費累計額 480,000円

※(2,000,000円-800,000円)×0.4=480,000円>償却保証額216,000円

20×3年決算時

(借) 減価償却費 288,000円 (貸) 減価償却費累計額 288,000円

※(2,000,000円-800,000円-480,000円)×0.4=288,000円>償却保証額216,000円

20×4年決算時

(借) 減価償却費 216,000円 (貸) 減価償却費累計額 216,000円

※(2,000,000円-800,000円-480,000円-288,000円)×0.4=172,800円<償却保証額216,000円
よって
期首未償却残高432,000円(=1,000,000円-800,000円-480,000円-288,000円)×改訂償却率0.500=216,000円

20×5年決算時
20×1年6月12日に車両運搬具を1,000,000円で購入した。この車両の走行可能距離は50,000㎞、当期の走行距離は1,000㎞、残存価額は取得原価の10%。会計期間は1月1日から12月31日とする。
生産高比例法による20×1年決算時の減価償却費の仕訳

※ 2,000,000円-800,000円-480,000円-288,000円-216,000円-1円

残存価額をゼロとする定率法は、平成19年度税制改正によって平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産についてスタートしたものです。当初は定率法の償却率が250%とされ、平成23年12月の税制改正によって平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産については200%に引き下げられました。
これらに対し、実務では平成19年度の税制改正前の定率法による減価償却方法は、旧定率法と呼ばれています。
このように取得年度の違いにより定率法の償却方法が異なりますが、簿記検定では問題文の指示に従います。

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生産高比例法

減価償却の生産高比例法とは、固定資産の耐用年数に渡り、毎期資産による生産又は用役の提供の度合に比例した減価償却費を計上する方法です。

この方法は、固定資産の総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生するもの、例えば、鉱業用設備、航空機、自動車等について適用することができます。

1年分の減価償却費=(取得原価-残存価額)×当期利用量÷総利用可能量

なお、生産高比例法では期中に取得(使用開始)しても、減価償却費を月割計算しません。これは生産高比例法では減価償却費を使用期間ではなく利用度をもとに計算するためです。

設例
20×1年6月12日に車両運搬具を1,000,000円で購入した。この車両の走行可能距離は50,000㎞、当期の走行距離は1,000㎞、残存価額は取得原価の10%。会計期間は1月1日から12月31日とする。
生産高比例法による20×1年決算時の減価償却費の仕訳

(借) 減価償却費 18,000円 (貸) 減価償却費累計額 18,000円

※ (1,000,000-1,000,000円×10%)×1,000㎞÷50,000㎞=18,000円

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減価償却費の記帳方法(直説法、間接法)

減価償却費の記帳法には、直接法と間接法の2つの方法があります。

直接法

直接法とは、減価償却費を建物などの固定資産勘定から直接控除する方法です。

(借) 減価償却費 ×××円 (貸) 建 物 ×××円

間接法

間接法とは、減価償却費を建物などの固定資産勘定から直接控除しないで、減価償却累計額という資産の評価勘定を使用して間接的に控除する方法です。

(借) 減価償却費 ×××円 (貸) (建物)減価償却累計額 ×××円