有価証券の区分ごとの決算処理(期末評価)、取得・売却、翌期首の仕訳、貸借対照表、損益計算書での表示 商業簿記2級独学講座

有価証券の決算処理(期末評価)、取得・売却、翌期首の仕訳、貸借対照表、損益計算書での表示

有価証券には様々あり、国債や地方債、株式、社債、投資信託の受益証券などが代表的なものですが、基本的に有価証券とは財産価値を持ち、譲渡することで、有価証券の持っている財産価値を移転させることができます。

簿記において有価証券は、保有目的によって「(1)売買目的有価証券」、「(2)満期保有目的の債券」、「(3)子会社株式及び関連会社株式」、「(4)その他有価証券」に区分され、それぞれの区分に応じて、貸借対照表価額、評価差額、評価損益、有価証券利息等の処理が異なります。

ここでは、有価証券の区分ごとの内容、決算処理(期末評価)、取得・売却、翌期首の仕訳、貸借対照表、損益計算書での表示について解説します。

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売買目的有価証券

売買目的有価証券とは、短期間の価格変動により利益を得る(トレーディング)ことを目的として保有する有価証券(株式や国債、地方債、社債など)で、同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われるものです。

有価証券を売買目的有価証券と分類するには、定款に有価証券の売買を業とすることが記載され、トレーディング業務を遂行する専門部署が売買目的有価証券を保管・運用していることが必要ですが、これらの要件を満たさなくても、有価証券の売買を頻繁に繰り返している場合は売買目的有価証券に該当します。

売買目的有価証券の取得(購入)時の仕訳

売買目的有価証券を取得(購入)したときは、取得原価で売買目的有価証券勘定の借方に記入します。購入手数料などの付随費用は取得原価に含めて処理します。

取得原価=購入単価×購入数+購入手数料

設例
A株式会社の株式500株を@1,000でトレーディング目的で購入し、購入手数料1,000円とともに現金で支払った。

(借) 売買目的有価証券 501,000円 (貸) 現 金 501,000円

売買目的有価証券の期末評価の方法、評価差額の損益計算書での表示区分

売買目的有価証券の期末評価は、決算日における時価をもって行い、時価と帳簿価額との差額(評価差額)は当期の有価証券評価損益として処理します。有価証券を時価評価する場合、その時価には取得又は売却に要する手数料等の付随費用は含めません。

有価証券評価損益の損益計算書における表示は、評価益であれば「有価証券評価益」として営業外収益の区分に、評価損であれば「有価証券評価損」として営業外費用の区分に表示します。

売買目的有価証券の翌期首の仕訳

売買目的有価証券を期末時価で評価した時の評価損益の翌期首の処理方法には、切放法と洗替法があります。

(1)切放法
切放法とは、当期末において時価評価した金額を翌期においても帳簿価額とする方法です。

①取得原価(1,000)<時価(1,500)の場合
当期末

(借) 売買目的有価証券 500 (貸) 売買目的有価証券評価益 500

売買目的有価証券簿価(貸借対照表計上額)1,500

翌期首
仕訳無し

売買目的有価証券簿価1,500

②取得原価(1,000)>時価(700)の場合
当期末

(借) 売買目的有価証券評価損 300 (貸) 売買目的有価証券 300

売買目的有価証券簿価(貸借対照表計上額)700

翌期首
仕訳無し

売買目的有価証券簿価700

(2)洗替法
洗替法とは、当期末において時価評価した金額を翌期首において時価評価前の金額(取得原価)に戻す方法です。

①取得原価(1,000)<時価(1,500)の場合
当期末

(借) 売買目的有価証券 500 (貸) 売買目的有価証券評価益 500

売買目的有価証券簿価(貸借対照表計上額)1,500

翌期首

(借) 売買目的有価証券評価益 500 (貸) 売買目的有価証券 500

売買目的有価証券簿価1,000

②取得原価(1,000)>時価(700)の場合
当期末

(借) 売買目的有価証券評価損 300 (貸) 売買目的有価証券 300

売買目的有価証券簿価(貸借対照表計上額)700

翌期首

(借) 売買目的有価証券 300 (貸) 売買目的有価証券評価損 300

売買目的有価証券簿価1,000

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売買目的有価証券の売却時の仕訳

売買目的有価証券を売却した場合、売却時点の帳簿価額に基づき売却原価を算定し、当該売却原価と売却価額との差額を売却損益として処理します。そのため、売買目的有価証券売却損益は切放法と洗替法で金額が異なります。

設例
20×1年10月1日にA社株式(売買目的有価証券)を3,000,000円(1,000株、@3,000)、購入手数料10,000円で現金で取得した。

20×1年12月31日におけるA社株式の時価は@2,500であった。

20×2年2月28日にA社株式を@2,800で全て売却し、売却手数料5,000円を差し引かれ現金を受け取った。

会社の会計期間は1月1日から12月31日とする。

(1)切放法
20×1年10月1日

(借) 売買目的有価証券 3,010,000円 (貸) 現 金 3,010,000円

20×1年12月31日

(借) 売買目的有価証券評価損 510,000円 (貸) 売買目的有価証券 510,000円

20×2年2月28日

(借) 現 金 2,795,000円 (貸) 売買目的有価証券 2,500,000円
(借) 支払手数料 5,000円 (貸) 有価証券売却益 300,000円

※売却による支払手数料は、営業外費用として処理します。また、有価証券売却損益に含めて処理することもあります。問題文に従うことになります。

(2)洗替法
20×1年10月1日

(借) 売買目的有価証券 3,010,000円 (貸) 現 金 3,010,000円

20×1年12月31日

(借) 売買目的有価証券評価損 510,000円 (貸) 売買目的有価証券 510,000円

20×2年1月1日

(借) 売買目的有価証券 510,000円 (貸) 売買目的有価証券評価損 510,000円

20×2年2月28日

(借) 現 金 2,795,000円 (貸) 売買目的有価証券 3,010,000円
(借) 支払手数料 5,000円
(借) 有価証券売却損 210,000円

※売却による支払手数料は、営業外費用として処理します。また、有価証券売却損益に含めて処理することもあります。問題文に従うことになります。

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売買目的有価証券の売却原価の算定方法

同一銘柄の売買目的有価証券を複数回にわたり異なる単価で取得した場合で、決算前にその一部を売却したときの売却原価は、総平均法または移動平均法により計算した払出単価に売却数量を乗じて求めます。

また、同一銘柄の有価証券を売買目的有価証券の区分とその他有価証券の区分とで所有している場合で、この有価証券の一部を売却したときは、売却した有価証券が組織上、明確に分別管理されていれば、管理区分に基づき売買目的有価証券かその他有価証券のいずれを売却したかを決定し、明確に分別管理されていない場合は、まず売買目的有価証券を売却したものと推定します。

設例
20×1年6月1日にA社株式(売買目的有価証券)を3,000,000円(1,000株、@3,000)、購入手数料10,000円で現金で取得した。

20×1年8月1日にA社株式(売買目的有価証券)を2,500,000円(1,000株、@2,500)、購入手数料8,000円で現金で取得した。

20×1年12月31日におけるA社株式の時価は@2,900であった。

20×2年1月31日にA社株式(売買目的有価証券)を3,200,000円(1,000株、@3,200)、購入手数料9,000円で現金で取得した。

20×2年2月28日にA社株式1,000株を@3,300で全て売却し、売却手数料5,000円を差し引かれ現金を受け取った。売却した株式の1株あたりの帳簿単価は移動平均法により計算し、売却手数料は売買損益に含めて処理する。

会社の会計期間は1月1日から12月31日とする。

(1)切放法
20×1年6月1日

(借) 売買目的有価証券 3,010,000円 (貸) 現 金 3,010,000円

20×1年8月1日

(借) 売買目的有価証券 2,508,000円 (貸) 現 金 2,508,000円

20×1年12月31日

(借) 売買目的有価証券 282,000円 (貸) 売買目的有価証券評価益 282,000円

20×2年1月31日

(借) 売買目的有価証券 3,209,000円 (貸) 現 金 3,209,000円

20×2年2月28日

(借) 現 金 3,295,000円 (貸) 売買目的有価証券 3,003,000円
(貸) 有価証券売却益 292,000円

(2)洗替法
20×1年6月1日

(借) 売買目的有価証券 3,010,000円 (貸) 現 金 3,010,000円

20×1年8月1日

(借) 売買目的有価証券 2,508,000円 (貸) 現 金 2,508,000円

20×1年12月31日

(借) 売買目的有価証券 282,000円 (貸) 売買目的有価証券評価益 282,000円

20×2年1月1日

(借) 売買目的有価証券評価益 282,000円 (貸) 売買目的有価証券 282,000円

20×2年1月31日

(借) 売買目的有価証券 3,209,000円 (貸) 現 金 3,209,000円

20×2年2月28日

(借) 現 金 3,295,000円 (貸) 売買目的有価証券 2,909,000円
(貸) 有価証券売却益 386,000円

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満期保有目的の債券

満期保有目的の債券とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(国債や地方債など)をいいます。

なお、「満期まで所有する意図をもって保有する」とは、償還期限まで所有する積極的な意思と能力に基づいて保有することをいいます。満期まで所有する意図は取得時点において判断します。

そのため保有する期間が漠然と長期であるとし保有期間をあらかじめ決めていない場合や市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される場合は、満期まで所有する意思があるとはされません。
また、満期までの資金力等から見て、又は法律等により継続的な保有が困難と判断される場合は、満期まで所有する能力があるとは認められません。

よって、社債や国債、地方債であっても短期的な売買を目的にする場合は、売買目的有価証券になります。

満期保有目的の債券の取得(購入)時の仕訳

満期保有目的の債券を取得した時は、取得原価(購入代価に購入手数料等の付随費用を加算した額)を満期保有目的の債券の借方に記入します。

取得原価=購入単価×購入数+購入手数料

設例
A社社債(額面総額5,000,000円)を額面100円につき95円で満期保有目的で購入し、購入手数料10,000円とともに現金で支払った。

(借) 満期保有目的の債券 4,760,000円 (貸) 現 金 4,760,000円

※ 5,000,000円×95円/100円+10,000円=4,760,000円

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満期保有目的の債券の期末評価の方法

満期保有目的の債券の期末評価は、原則として取得原価で評価します。
ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合、差額が金利の調整と認められるときは償却原価法で算定した価額で評価します。

償却原価法とは、債券の額面金額と取得原価の差額を償還期限まで利息法又は定額法で帳簿価額に加算減算するとともに、相手勘定は加算減算する額を有価証券利息として処理する方法です。

加算減算する方法は利息法を原則としますが、継続適用を条件に定額法を採用できます。
検定においては問題文に従いますが、簿記2級では定額法になります。

定額法とは、債券の金利調整差額を取得日(又は受渡日)から償還日までの期間で除して各期の純損益に配分し、当該配分額を帳簿価額に加減する方法です。

設例
20×1年6月1日にA社社債(額面総額5,000,000円、償還日20×6年5月31日)を額面100円につき94円で満期保有目的で購入し、購入手数料10,000円とともに現金で支払った。
取得原価と額面金額の差額は全て金利の調整と認められる。
会計期間は1月1日~12月31日とし、満期保有目的の債券の期末評価は償却原価法(定額法)による。

20×1年6月1日

(借) 満期保有目的の債券 4,710,000円 (貸) 現 金 4,710,000円

※ 5,000,000円×94円/100円+10,000円=4,710,000円

20×1年12月31日

(借) 満期保有目的の債券 35,000円 (貸) 有価証券利息 35,000円

※ 5,000,000円×94円/100円/×7ヶ月(6月~12月)/60ヶ月=35,000円

20×2年12月31日

(借) 満期保有目的の債券 60,000円 (貸) 有価証券利息 60,000円

※ 5,000,000円×94円/100円/×12ヶ月/60ヶ月=35,000円

20×3年12月31日

(借) 満期保有目的の債券 60,000円 (貸) 有価証券利息 60,000円

20×4年12月31日

(借) 満期保有目的の債券 60,000円 (貸) 有価証券利息 60,000円

20×5年12月31日

(借) 満期保有目的の債券 60,000円 (貸) 有価証券利息 60,000円

20×6年5月31日

(借) 満期保有目的の債券 25,000円 (貸) 有価証券利息 25,000円

利息法
債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率となるように、複利をもって各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額とクーポン計上額との差額を帳簿価額に加減します。

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子会社株式及び関連会社株式

子会社株式とは、発行済み株式の過半数を保有するなど他社の意思決定機関を支配する目的で保有する株式をいいます。親会社及び子会社または子会社が他社の意思決定機関を支配している場合の他社も親会社の子会社になります。

関連会社株式とは、発行済み株式の20%~50%を保有するなど他社の意思決定に重要な影響力を与えるために保有する子会社株式以外の株式をいいます。

子会社株式及び関連会社株式の取得(購入)時の仕訳

子会社株式及び関連会社株式を取得(購入)したときは、取得原価でそれぞれ子会社株式勘定、関連会社株式勘定の借方に記入します。購入手数料などの付随費用は取得原価に含めて処理します。

取得原価=購入単価×購入数+購入手数料

設例
A株式会社の株式500株を@1,500円で支配目的で購入し、購入手数料1,000円とともに現金で支払った。またB株式会社の株式200株を@900円で意思決定に重要な影響力を与えるために購入し、購入手数料1,000円とともに現金で支払った。

(借) 子会社株式 751,000円 (貸) 現 金 932,000円
(借) 関連会社株式 181,000円

子会社株式及び関連会社株式の期末評価の方法

子会社株式及び関連会社株式の期末評価は、たとえ時価のある有価証券であっても時価ではなく、取得原価をもって評価します。

子会社株式も関連会社株式も長期所有を目的とするため、時価の変動を認識する必要が無いためです。

設例
A株式会社の株式500株を購入時の時価@1,000円で支配目的で購入し、購入手数料1,000円とともに現金で支払った。
決算日の時価は@1,200円であった。

購入時

(借) 子会社株式 501,000円 (貸) 現 金 501,000円

決算日
仕訳無し

減損処理
簿記2級の学習範囲ではありませんが、子会社株式及び関連会社株式であっても、時価のあるものについては、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし評価差額を損失として処理し、時価を把握することが極めて困難と認められる場合は取得原価をもって貸借対照表価額としますが、子会社株式や関連会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は損失として処理します。

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その他有価証券

その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいいます。
長期的な時価変動による利益を目的に保有する株式や公社債、持ち合い株式のように業務提携等の目的長期間保有する株式などがあります。

その他有価証券の取得(購入)時の仕訳

その他有価証券を取得した時は、取得原価(購入代価に購入手数料等の付随費用を加算した額)をその他有価証券の借方に記入します。

取得原価=購入単価×購入数+購入手数料

設例
A社株式5,000株を@900円で取引関係の維持目的で購入し、購入手数料10,000円とともに現金で支払った。

(借) その他有価証券 4,510,000円 (貸) 現 金 4,510,000円

※ 5,000株×@900円+10,000円=4,510,000円

その他有価証券の期末評価の方法

その他有価証券は、長期的な時価の変動により利益を得ることや業務提携等の目的で保有するため、最終的には売却することが想定されるため期末(決算日)においては時価で評価します(時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については取得原価になります)。
時価評価により発生する評価差額の処理には、(1)全部純資産直入法と(2)部分純資産直入法があり、全部純資産直入法を原則としますが、継続適用を条件として部分純資産直入法を適用することができます。

なお、簿記2級においては全部純資産直入法だけが学習範囲になり、部分純資産直入法は簿記1級の学習範囲になりますので、ここでは全部純資産直入法について紹介します。

全部純資産直入法

全部純資産直入法は、評価差額(評価差益及び評価差損)を純資産の部に計上します。

すなわち、時価が取得原価を上回っている場合には、その評価差額を「その他有価証券」勘定の借方に記入するとともに、「その他有価証券評価差額金」勘定(純資産)の貸方に記入します。逆に時価が取得原価を下回っている場合には、その評価差額を「その他有価証券」勘定の貸方に記入するとともに、「その他有価証券評価差額金」勘定(純資産)の借方に記入します。

そして全部純資産直入法においては、評価差額は洗替処理され、翌期首にはその他有価証券の帳簿価額を取得原価に戻します。

なお、評価差額は税効果会計の適用が問題となりますが、税効果会計については税効果会計の項目で解説します。

このように、その他有価証券の評価差額については損益計算書に計上されません。

減損処理
簿記2級の学習範囲ではありませんが、その他有価証券で時価があるものの時価が著しく下落したときや時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券で株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときで、いずれも回復する見込みがないときは評価差額を当期の損失として処理します。

設例
(1)20×1年6月1日にA社株式3,000株を購入時の時価@1,000円で購入し、購入手数料10,000円とともに現金を支払った。A社株式は時価の高騰により長期的に利益を得る目的で購入したものである。

(借) その他有価証券 3,010,000円 (貸) 現 金 3,010,000円

(2)決算日(20×1年12月31日)にA社株式の時価を調べたところ@1,050円となっていた。

(借) その他有価証券 140,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 140,000円

(3)翌期首(20×2年1月1日)

(借) その他有価証券評価差額金 140,000円 (貸) その他有価証券 140,000円

(4)20×2年8月1日にA社株式2,000株を購入時の時価@1,100円で購入し、購入手数料10,000円とともに現金を支払った。A社株式は時価の高騰により長期的に利益を得る目的で購入したものである。

(借) その他有価証券 2,210,000円 (貸) 現 金 2,210,000円

(5)決算日(20×2年12月31日)にA社株式の時価を調べたところ@850円となっていた。

(借) その他有価証券評価差額金 970,000円 (貸) その他有価証券 970,000円

(6)翌期首(20×3年1月1日)

(借) その他有価証券 970,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 970,000円

部分純資産直入法
部分純資産直入法とは、時価が取得原価を上回る有価証券の評価差額(評価差益)はその他有価証券評価差額金勘定の貸方(純資産)に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価差損)は当期の損失として処理する方法です。

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債券をその他有価証券とし、取得時に金利調整差額が生じている場合の処理

債券をその他有価証券として購入し、取得価額と額面金額に差があり、当該差額が金利の調整と認められる場合のその他有価証券の期末評価は、最初に償却原価法を適用し取得原価を償却原価に修正し、その後時価評価を行います。

設例
20×1年5月1日にA社社債額面1,000,000円を940,000円で発行時に現金で購入した。
額面金額と取得価額の差額は全て金利の調整であり、定額法による償却原価法を適用する。
償還は20×6年4月30日で、その他有価証券として区分所有している。
会計期間は1月1日から12月31日とする。

(1)20×1年5月1日

(借) その他有価証券 940,000円 (貸) 現 金 940,000円

(2) 20×1年12月31日
決算日のA社社債の時価は980,000円であった。

(借) その他有価証券 8,000円 (貸) 有価証券利息 8,000円
(借) その他有価証券 32,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 32,000円

(3)20×2年1月1日

(借) その他有価証券評価差額金 32,000円 (貸) その他有価証券 32,000円

(4) 20×2年12月31日
決算日のA社社債の時価は930,000円であった。

(借) その他有価証券 12,000円 (貸) 有価証券利息 12,000円
(借) その他有価証券評価差額金 30,000円 (貸) その他有価証券 30,000円

(5)20×3年1月1日

(借) その他有価証券 30,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 30,000円

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株式の追加取得によりその他有価証券から子会社株式や関連会社株式になる場合の処理

株式を取得した当初はその他有価証券として保有しているものの、その後の株式の追加取得により株式の保有割合が一定割合以上になると、追加取得した会社が子会社株式や関連会社株式に該当するようになることがあり、子会社株式や関連会社株式に該当するようになったときは、その他有価証券勘定から子会社株式勘定や関連会社株式勘定へ振り替える必要が生じます。

その他有価証券勘定から子会社株式勘定や関連会社株式勘定へ振り替える場合、その他有価証券勘定の貸方に取得原価で記入し、付随費用とともに子会社株式勘定や関連会社株式勘定の借方に記入します。

設例
(1)20×1年8月1日にA社株式2,000株(発行済株式の10%)を購入時の時価@1,300円で購入し、購入手数料10,000円とともに現金を支払った。A社株式は時価の高騰により長期的に利益を得る目的で購入したものである。

(借) その他有価証券 2,610,000円 (貸) 現 金 2,610,000円

(2)決算日(20×1年12月31日)にA社株式の時価を調べたところ@1,250円となっていた。

(借) その他有価証券評価差額金 110,000円 (貸) その他有価証券 110,000円

(3)翌期首(20×2年1月1日)

(借) その他有価証券 110,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 110,000円

(4)20×2年7月1日にA社株式12,000株(発行済株式の60%)を購入時の時価@1,400円で購入し、購入手数料10,000円とともに現金を支払った。A社株式の追加取得によりA社は子会社となった。

(借) 子会社株式 19,420,000円 (貸) 現 金 16,810,000円
(貸) その他有価証券 2,610,000円

その他有価証券の売却時の仕訳

その他有価証券を売却した場合、売却時点の帳簿価額に基づき売却原価を算定し、当該売却原価と売却価額との差額を売却損益として処理します。

設例
20×1年9月1日にA社株式を長期保有目的で2,000,000円(800株、@2,500)、購入手数料5,000円で現金で取得した。
20×1年12月31日におけるA社株式の時価は@2,800であった。
20×2年2月28日にA社株式を@2,300で全て売却し、売却手数料5,000円を差し引かれ現金を受け取った。
会社の会計期間は1月1日から12月31日とする。

20×1年9月1日

(借) その他有価証券 2,005,000円 (貸) 現 金 2,005,000円

20×1年12月31日

(借) その他有価証券 235,000円 (貸) その他有価証券評価差額金 235,000円

20×2年1月1日

(借) その他有価証券評価差額金 235,000円 (貸) その他有価証券 235,000円

20×2年2月28日

(借) 現 金 1,835,000円 (貸) その他有価証券 2,005,000円
(借) 支払手数料 5,000円
(借) 有価証券売却損 165,000円

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有価証券の保有目的による区分(分類)ごとの貸借対照表での表示

有価証券は、仕訳の勘定科目と貸借対照表での表示が異なります。

保有目的による区分 貸借対照表での表示科目 長期短期の区分
売買目的有価証券 有価証券 流動資産
満期保有目的の債券 投資有価証券 投資その他の資産または流動資産 ※
子会社株式
関連会社株式
関係会社株式 投資その他の資産
その他有価証券 投資有価証券 投資その他の資産または流動資産 ※

※ 決算日後1年以内に満期の到来する債券(公社債など)は、流動資産の部に「有価証券」として表示します。

有価証券売却損益の損益計算書での表示

保有目的により区分された有価証券は、売却時には保有目的により売却損益の損益計算書での表示が異なります。

売買目的有価証券の売却損益は、有価証券の売買を主たる事業としている場合は営業損益の構成項目とし、それ以外の場合は営業外損益の構成項目として、いずれの場合も純額で表示します。

満期保有目的の債券の売却損益は、残りの満期保有目的の債券の保有意思を否定されない合理的な理由による売却に伴う損益である限り、純額で営業外損益に計上します。ただし、満期保有目的の債券の売却は厳しく制限されますので、合理的な理由によらない売却による損益は特別損益に計上します。

子会社株式及び関連会社株式の売却損益は、特別損益に、原則として売却益と売却損を相殺せずに総額で表示します。

その他有価証券の売却損益のうち特別損益に計上するのは臨時的なものに限定し、臨時的なもの以外は営業外損益に計上します。