普通預金、定期預金など預金の種類と取引の簿記の仕訳例
預金には、さまざまな種類があり、現金と同じく代金の決済に用いられる「流動性預金(要求払預金)」、預け入れ期間が定められ一定期間払い戻せない「定期性預金」、一定の据え置き期間の経過後引き出しが可能な「引き出し自由型定期預金」、定期預金にデリバティブを組み込んだ「仕組預金」などに分けられます。
預金の種類
流動性預金(要求払預金)
・普通預金
預入期間の規定は無く、1円から預け入れ、引き出しができます。また自動引き落としが利用でき小切手、手形の預け入れもできます。原則として利息が付き、預け入れ金融機関が破綻した場合、ペイオフ(1金融機関につき預金者1人に元本1,000万円までと破綻日までの利息等を預金保険機構が保証)の対象となりますが、利息の付かない無利息型普通預金もあり、無利息型普通預金は預け入れ金融機関が破綻しても全額が保護されます。
・当座預金
法人や個人事業主が小切手や手形を振り出すために利用する預金で、1円から預け入れ、引き出しができます。利息は付きませんが、預け入れ金融機関が破綻しても全額が預金保護の対象となります。
・貯蓄預金
1円から預け入れでき、預入額が一定額を超えれば普通預金より高い金利がもらえる預金です。法人は利用できず個人の利用に限定されます。お金の出し入れは自由ですが自動引き落としなどの決済機能はありません。預金保険制度の対象ですので預け入れ金融機関が破綻した場合、1金融機関につき預金者1人に元本1,000万円までと破綻日までの利息は預金保険機構が保証してくれます。
・通知預金
普通預金より高い金利がもらえる預金で、法人でも個人でも利用できます。預入期間の定めはありませんが、預入後最低7日間は据置期間が必要です。1円単位で預入できますが、銀行により異なった最低預入金額が定められています。払い戻しは随時できますが、預け入れた金額の一部だけを引き出せないといった制約があり、引き出し日の2日前までに通知が必要です。
預金保険制度の対象になります。
・納税準備預金
納税資金に限って預け入れことのできる預金です。法人でも個人でも利用できます。引出しは原則として納税に限定されますが、普通預金よりも利率が高く、利息は非課税となっています(納税以外の払出しについては、利息は課税になります)。
預金保険制度の対象になります。
・別段預金
銀行サイドからすると銀行業務に該当しない資金を預かった際に一時保管する預金で、銀行に返還義務があるものだけでなく仮受金のようなものも含まれます。普通預金や当座預金のように約款などにより扱われる預金とは異なり、原則として預入期間はなく、通帳や証書は発行されません。利息は原則として付きませんが、預金保険制度の対象になります。
企業側においては、出資の払込期日までに振り込まれた資金を別段預金で処理します。
定期性預金
・定期預金
1年や2年など、最初に預け入れ期間を指定して資金を預け入れる預金で、原則として満期日まで払い戻しができません。普通預金より金利が高いですが、満期日までに払い戻しをすると普通預金と同じ金利になります。
預金保険制度の対象になります。
スーパー定期…1,000万円未満の小口資金を対象
大口定期…1,000万円を超える資金を対象
積立定期…毎月、決まった日に預金の積み立てをする定期預金
期日指定定期…満期日を自由に決められる定期預金
等があります。
・仕組預金
元本の減少リスクを負っても高金利を獲得するためデリバティブ取引を預金に組込む預金です。銀行が満期日を選択できる権利を持っていたり、為替相場によって払戻通貨等がきまったりなど、通常の預金にない特徴があります。
預金保険の対象となるものとならないものがあります。
外貨預金
円ではなく外国の通貨で行う預金です。円建預金よりも金利が高い場合に、将来円安になると思われる場合に預け入れします。流動性預金、定期性預金ともにあります。
なお、預金保護の対象にはならず、払戻時に預入時より円高になっていれば、受取利息を超える元本割れが起こり、損する可能性があります。
譲渡性預金
定期預金の一つで、預金者が第三者に金融市場で譲渡可能な無記名の定期預金のことです。譲渡性預金の発行者は金融機関に限られ、発行金額や期間、金利などは自由に設定できます。
預金の取引、仕訳例
預金は資産ですので、預金が増加する取引は借方に、減少する取引は貸方に記帳します。
普通預金
取引、仕訳例1
銀行と10,000,000円の借入契約を締結し、普通預金へ入金された。
(借) | 普通預金 | 10,000,000円 | (貸) | 借入金 | 10,000,000円 |
取引、仕訳例2
買掛金500,000円の支払いを普通預金からの振り込みにより行った。
(借) | 買掛金 | 500,000円 | (貸) | 普通預金 | 500,000円 |
当座預金
取引、仕訳例1
銀行と当座勘定取引契約を結び、普通預金1,000,000円を当座預金に入金した。
(借) | 当座預金 | 1,0000,000円 | (貸) | 普通預金 | 1,000,000円 |
取引、仕訳例2
建物購入代金100,000,000円を小切手を振り出して支払った。
(借) | 建物 | 100,0000,000円 | (貸) | 当座預金 | 100,000,000円 |
貯蓄預金
取引、仕訳例1
貯蓄預金の金利が普通預金より高いので、普通預金にある1,000,000円を貯蓄預金に預け入れた。
(借) | 貯蓄預金 | 1,0000,000円 | (貸) | 普通預金 | 1,000,000円 |
取引、仕訳例2
資金繰りが苦しくなったので給料の支払いのため貯蓄預金3,000,000円を崩し、普通預金に入金した。
(借) | 普通預金 | 1,0000,000円 | (貸) | 貯蓄預金 | 1,000,000円 |
納税準備預金
取引、仕訳例1
当年度の予想利益が大きく、納税が多額になることが予想されるため小切手5,000,000円を振り出して納税預金に入金した。
(借) | 納税準備預金 | 5,0000,000円 | (貸) | 当座預金 | 5,000,000円 |
取引、仕訳例2
法人税3,000,000円を納税預金から支払った。
(借) | 未払法人税等 | 3,0000,000円 | (貸) | 納税準備預金 | 3,000,000円 |
別段預金
取引、仕訳例1
新株100株を1株50,000円で発行し、払込期日までに5,000,000円が振り込まれた。
(借) | 別段預金 | 5,0000,000円 | (貸) | 株式申込証拠金 | 5,000,000円 |
取引、仕訳例2
払込期日の翌日、全額を資本金とし、普通預金へ振り替えた。
(借) | 株式申込証拠金 | 5,0000,000円 | (貸) | 資本金 | 5,000,000円 |
(借) | 普通預金 | 5,0000,000円 | (貸) | 別段預金 | 5,000,000円 |
定期預金
取引、仕訳例1
資金に余裕ができたので、小切手を振り出し定期預金10,000,000円を作成した。
(借) | 定期預金 | 10,0000,000円 | (貸) | 当座預金 | 10,000,000円 |
取引、仕訳例2
定期預金10,000,000円の満期が到来し、普通預金に入金された。
(借) | 普通預金 | 10,0000,000円 | (貸) | 定期預金 | 10,000,000円 |
仕組預金
デリバティブが組み込まれている預金を複合金融商品といいます。
複合金融商品の会計処理には区分法と一括法がありますが、複合金融商品は簿記3級では出題されませんので処理方法は割愛します。
外貨預金
取引、仕訳例1
円安になることを見込み普通預金3,000,000円を外貨建ての定期預金にした。
(借) | 外貨建定期預金 | 3,0000,000円 | (貸) | 普通預金 | 3,000,000円 |
取引、仕訳例2
ドル建ての買掛金5,000,000円分を、外貨建て普通預金から支払った。
(借) | 買掛金 | 5,0000,000円 | (貸) | 外貨建普通預金 | 5,000,000円 |
譲渡性預金
譲渡性預金は定期預金の一つですが、簿記では有価証券として処理します。
取引、仕訳例
普通預金5,000,000円で譲渡性預金を購入した。
(借) | 有価証券 | 5,0000,000円 | (貸) | 普通預金 | 5,000,000円 |