投資信託 契約型、会社型の違い、投資法人とは?
投資信託は、設立形態の違いにより「契約型」と「会社型」の2つに別けられます。
投資信託は、従来、契約型しか認められていませんでしたが、1998年の証券投資信託法(改正後:証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(現:投資信託及び投資法人に関する法律))の改正によって、会社型投資信託も認められることになりました。
「契約型」と「会社型」の大きな違いは、投資家の資金の運用方針を決め、運用方法を受託会社に指示する委託会社(投資信託会社)と資産を実際に運用する受託会社(信託銀行)との間に信託契約があるかどうか、議決権の行使を通じて投資信託の運営に参加できるかどうかです。ただし、経済的機能としては両社に大きな違いはありません。
なお、契約型投資信託、会社型投資信託はともに上場投資信託、非上場投資信託があり、金融商品取引所に上場されているものは、一般の上場株式と同様に売買されています。
契約型投資信託とは
投資信託の多くが契約型投資信託です。
契約型投資信託は、日本では信託形態をとりますが、委託者指図型と委託者非指図型があります。
委託者指図型投資信託
委託者指図型は、委託者、受託者、受益者で構成され、委託会社(投資信託会社)と実際に資金を運用する受託会社(信託銀行)が信託契約を結び、これをもとに委託会社が発行する受益証券(受益権)を受益者が購入し、運用の成果を分配金として受け取る仕組みです。
委託者は金融庁に登録した投信信託会社であり、商品開発や信託約款の作成、受託者へ信託財産の運用指図、基準価格の計算などを行い、受託会社(信託銀行)は、委託者からの指図による信託財産の運用、信託契約に基づき投資信託財産を保管・管理します。
委託者指図型は、もっとも多い投資信託のタイプです。
委託者非指図型投資信託
委託者非指図型投資信託とは、2000年の投資信託及び投資法人に関する法律の改正により認められるようになった投資信託です。
一個の信託約款に基づいて、受託者が複数の委託者との間で結ぶ信託契約により受け入れた金銭を、合同して、委託者の指図に基づかず主として特定資産に対する投資として運用することを目的とします(投資信託及び投資法人に関する法律2条2項)。
「委託者の指図に基づかず」というのは、投資信託会社が受託者と受益者2者で構成されることを意味するもので、受託者(信託銀行)が委託者兼受益者である複数の投資家との間で個別に信託契約を結び、その資金を一つの信託財産とし、受託者である信託銀行が主に有価証券以外の特定資産で運用し、信託財産の保管・管理をします。
有価証券を主な運用資産とすることは禁止されています(投資信託及び投資法人に関する法律48条)。
特定資産とは
特定資産とは、投資信託及び投資法人に関する法律施行令第3条に挙げられる次のようなものをいいます。
・有価証券
・デリバティブ取引に係る権利
・不動産
・不動産の賃借権
・金銭債権
・匿名組合出資持分
など
会社型投資信託とは
会社型投資信託とは、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づき、主として有価証券や不動産などの特定の資産への投資を目的とした投資法人を設立し、投資法人の発行する投資証券を投資家が購入する投資信託のことです。特定の資産の範囲は、投資法人によって異なります。
投資主(投資家)は、保有する投資の口数に応じて投資法人から収益の分配を受けるとともに、投資主総会(株式会社における株主総会に相当)における議決権を持ち、投資主総会を通じてファンドの運営に参加することができます。
そのため契約型投資信託に比べると、投資主による運用のガバナンスが効き、会社型投資信託の委託業者も、投資家の同意を得ることで運用方針を柔軟に変更できるメリットがあります。
会社型投資信託の代表的なものとしては、REIT(不動産投資信託)やベンチャーファンドがあります。
投資法人とは
投資法人とは、資産を主に特定資産で運用することを目的として、投資信託及び投資法人に関する法律に基づいて設立された社団をいいます(投資信託及び投資法人に関する法律2条12項)。
投資法人が投資対象とする特定資産の範囲は、投資法人によって異なり、特定資産の運用を行うには内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
投資法人に対する出資に相当するものを「投資口」といい、投資口とは、均等に細分化された割合的単位の形をとる投資法人の社員の地位(投資主)をいいます。
投資主は、保有する投資口につき金銭・残余財産の分配を受ける権利、投資主総会における議決権などを持ちます。
なお投資法人は、自らが資産運用などの業務を行うことができない(投資信託及び投資法人に関する法律第63条1項)ため、運用方針を決定するだけで、実際の運用は投資信託委託業者に、また資産管理や発行証券の募集、名義書換、資産の計算事務などの業務も別会社に委託しています。
そのため投資法人に役員はいますが、従業員はいません(投資信託及び投資法人に関する法律63条2項)。
投資法人の課税の特例
一定の条件を満たす投資法人については、投資法人と投資主との間の二重課税を排除するため、配当等の額が、その事業年度の配当可能利益の額として政令で定める金額の90%を超える場合は、所得の金額の計算上、損金の額に算入することができるとされています(租税特別措置法67条の15)。
株式会社においては、配当は損金として認められせんので、利益から税金を控除した後の額が配当の対象になりますが、一定の条件を満たす投資法人については、配当が損金として認められるので税金が安くなり、安くなった税金の分だけ配当可能額が増え、その分投資主に多くの配当金が支払い可能になります。
ただし、投資法人から支払を受ける配当等については、株式の配当と同じようなものですが、所得税の配当控除の対象外(国税庁 配当所得があるとき(配当控除))、受取配当の益金不算入の対象外(租税特別措置法65条の15 4項)となっており、投資法人からの配当には税金が課されます。。
投資法人と投資主との間で二重課税にならないためです。