電子記録債権・債務とは?受取手形・支払手形との違い
電子記録債権とは、国の指定を受けた電子債権記録機関に債権を電子的に記録してもらうことにより電子記録債権法で定められた電子記録債権としての効力が発生するものです。
電子債権記録の登録は、相手の承諾を受けた後に、取引金融機関を通して債権者、債務者いずれからも行うことができ、電子記録債権の登録がされると、取引先に通知され、自動で銀行口座を通した決済が行われます。
印紙税がかからないことや紛失・盗難のリスクがないこと、債権が分割、譲渡、分割譲渡可能であるなど、手形と比較しメリットが多いことから、手形に代わる決済手段として普及しています。
電子記録債権、電子記録債務取引発生の流れはおおむね次のようになります。
- ①ABC㈱は商品を掛けでXYZ㈱へ販売します。
- ②商品の買主であるXYZ㈱(債務者)が商品の売主であるABC㈱(債権者)に買掛金を電子記録債務で支払うことの承諾を依頼します。
- ③ABC㈱は電子記録債権での回収を承諾し、XYZ㈱へ通知します。
- ④XYZ㈱は、自らの取引銀行である乙銀行にABC㈱への債務の発生記録の請求を依頼します。
- ⑤XYZ㈱は、買掛金の支払期日に買掛金から電子記録債務へ振り替える仕訳をします。
-
(借) 買掛金 ×××円 (貸) 電子記録債務 ×××円 - ⑥乙銀行は電子債権記録機関に債務の発生記録の請求をします。
- ⑦電子債権記録機関は、甲銀行に債権の発生記録の通知をします。
- ⑧甲銀行はABC㈱に債権発生記録の通知をします。
- ⑨ABC㈱は、売掛金の回収期日に電子記録債権へ振り替える仕訳をします。
-
(借) 電子記録債権 ×××円 (貸) 売掛金 ×××円 - ⑩電子記録債権・債務の支払い期日が到来すると、銀行口座間で決済が行われます。
受取手形・支払手形と電子記録債権・債務との違い
受取手形 | 電子記録債権 | |
事務手続き | 煩雑 | 少ない |
保管・郵送コスト | 必要 | 不要 |
印紙税 | 必要 | 不要 |
紛失・盗難リスク | 有り | 無し |
取立手続き | 有り | 無し |
譲渡 | 不可能 | 可能 |
分割 | 不可能 | 可能 |
分割譲渡 | 不可能 | 可能 |
割引 | 不可能 | 可能 |
手数料 | 不要 | 必要 |
電子記録債権の会計処理・仕訳
電子記録債権に関する主な取引は、発生と消滅があり、これらは受取手形に準じた会計処理・仕訳(発生は手形の受取、消滅は手形の決済)になります。
よって、売掛金を電子記録債権で回収した場合、電子記録債権を借方に、売掛金を貸方に記帳し、電子記録債権が決済された時は、電子記録債権を貸方に記帳します。
取引、仕訳例
5月1日、A社に対し商品を100,000円掛けで販売した。
(借) | 売掛金 | 100,000円 | (貸) | 売 上 | 100,000円 |
5月15日、事前にA社に手形から電子記録債権での回収を依頼し、承諾をもらい、取引銀行を通じて電子債権記録機関に対し、5月31日付の電子記録債権(決済は6月30日)の記録の請求を行った。
仕訳無し
5月31日
(借) | 電子記録債権 | 100,000円 | (貸) | 売掛金 | 100,000円 |
6月30日、電子記録債権100,000円が決済され、普通預金に入金された。
(借) | 普通預金 | 100,000円 | (貸) | 電子記録債権 | 100,000円 |
電子記録債務の会計処理・仕訳
電子記録債務に関する主な取引は、発生と消滅があり、これらは支払手形に準じた会計処理・仕訳(発生は手形の振り出し、消滅は手形の決済)になります。
よって、買掛金を電子記録債権で支払った場合、電子記録債務を貸方に、買掛金を借方に記帳し、電子記録債務が決済された時は、電子記録債務を借方に記帳します。
取引・仕訳例
5月1日、A社から商品を100,000円掛けで仕入れた。
(借) | 仕 入 | 100,000円 | (貸) | 買掛金 | 100,000円 |
5月15日、事前にA社に手形から電子記録債務での支払いを依頼し、承諾をもらい、取引銀行を通じて電子債権記録機関に対し、5月31日付の電子記録債務(決済は6月30日)の記録の請求を行った。
仕訳無し
5月31日
(借) | 買掛金 | 100,000円 | (貸) | 電子記録債務 | 100,000円 |
6月30日、電子記録債権100,000円が決済され、当座預金から支払われた。
(借) | 電子記録債務 | 100,000円 | (貸) | 当座預金 | 100,000円 |