REIT(リート)・不動産投資信託、不動産投資法人とは?仕組み、メリット・デメリット、リスク、分配金の注意点など

REIT(リート)・不動産投資信託の仕組み、不動産投資との違い、メリット・デメリット、リスク、配当控除など分配金の注意点など

不動産は、もともと価格が高く、また不動産の購入には売買代金だけでなく、仲介手数料や、登録免許税、不動産取得税、印紙代など様々な付随費用がかかり、これらが売買価格のおおよそ5~8%と高額なこと、売り手買い手を見つけるのが難しく、様々な書類も必要なことから売買に時間がかかることなどから、個人が購入するには敷居が高いものでした。

さらに不動産は同じものが無いため、売り手と買い手に情報の差ができ、例えば、自殺や他殺などの事件、建物に大きな瑕疵があるなど売主しか分からないことを、売主が買主に伝えなかったために購入後に高い値段で買わされたことが判明するなど、不動産のプロであっても騙されることが多々ありました。

こういったことから個人投資家の資金は、不動産市場になかなか集まりませんでした。

そこで買主のリスクを下げ、購入コストがかからず、少額から投資でき、簡単に売却できるよう、1998年の「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」の改正により2000年に施行された「投資信託及び投資法人に関する法律」により、それまでは証券投資信託を前提に有価証券でしか運用できなかった投資信託が、原油などの商品や不動産など有価証券以外の資産にも投資できるようになりました。

また不動産投資信託が東京証券取引所に上場することで、不動産投資信託に投資する個人投資家が増え、不動産投資信託が不動産の新たな買い手として台頭し、投資用不動産に資金が流れるようになり、不動産の流動性が高まりました。

これにより、バブル崩壊後の不動産価格の暴落、それによる担保価値の低下、金融機関の不良債権の増加、さらなる不動産価格の下落といった負のスパイラルが断ち切られ、不動産価格は回復しました。

その後2010年には私募REIT(非上場)の第1号が立ち上がり、安定した運用方針から適格機関投資家に好まれ、私募REITの数や規模も増えていきました。

ここでは、投資信託のなかでも投資対象が不動産であるREIT(リート)・不動産投資信託とはどのような投信なのか?その仕組み、株式や実物の不動産への投資との違い、メリット・デメリット、リスク、配当控除など分配金の注意点などについて紹介します。

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REIT(リート)とは?

REIT(リート)とは、多くの投資家から集めた資金をオフィスビルや商業施設、マンション、ホテル、物流施設、倉庫などの不動産に投資し、そこから得られた家賃収入や売却益を投資家に分配する不動産投資信託です。

REITに投資することで、投資家はREITを通じて不動産のオーナーになります。そのため、REITの所有者は一口大家さんと呼ばれたりします。

なおREITという名称は、「Real Estate Investment Trust」の頭文字をつなげたもので、東京証券取引に上場しているREITにはJapanのJを付けて、J-REIT(ジェイリート)と呼んでいます。

金額が大きく換金性が低い不動産を投資信託制度を利用した投資とすることで不動産を小口に証券化し投資しやすくできましたが、運用対象の不動産の換金性が低いことに変わりがないので、投資信託を上場させることで10万円程度から証券市場で売買できるようになり、換金性が高くなっています。

REIT(リート)・不動産投資信託の仕組み

投資信託は、従来、契約型だけが認められていましたが、1998年の証券投資信託法(改正後:証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(現:投資信託及び投資法人に関する法律))の改正によって、会社型も認められることになりました。

そのため、現在REITは、法律上の分類では「契約型」と「会社型」の2種類あります。

契約型は、不動産運用会社と運用の受託会社である信託銀行との信託契約に基づき、投資した資金を不動産で運用し、運用収益を投資家に分配する方式です。運通常の有価証券を投資対象とする投資信託と仕組みは同じです。

一方、会社型は、不動産投資法人を設立して不動産投資証券を発行し、投資家から資金を集め、不動産投資を行なう方式です。
投資家は投資口数に応じて、不動産投資法人が保有不動産から得た収益からの分配を受けるとともに、株主総会に相当する投資主総会における議決権を持ち、投資主総会を通じてファンドの運営に参加します。

契約型投資信託、会社型投資信託・投資法人とは?両者の違いは?

このように契約型と会社型では法的には大きく異なりますが、投資家は投資信託が得た収益から分配金を受け取るということは同じですので、経済的な機能としては両社に大きな違いはありません。

なお、実際に日本で行なわれている不動産投資信託のほとんどは会社型です。

契約型投資信託の仕組みは、通常の有価証券を投資対象とする投資信託と同じですので、ここからは会社型投資信託、特に不動産投資法人の仕組みについて解説します。

不動産投資法人とは

不動産投資法人とは、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づき投資家から集めた資金を、主として不動産に投資して運用することを目的に設立された法人をいいます。

不動産投資法人は、株式会社の株式に相当する投資証券と呼ばれる有価証券を発行することで投資家から資金を集めます。

さらに金融機関からの借入金や投資法人債の発行などを合わせた資金でマンションや倉庫、テナントビルなどの不動産や不動産関連資産を購入し、主として賃貸で運用し、賃貸収入や売却代金から不動産の維持・管理費用や金利などを支払った後の利益を投資家に分配します。

ただしREITは、一般の事業会社と異なり、法律で投資関連業務を全て外部の運用機関へ委託することが義務付けられ、従業員を雇うことや本店以外の営業所を設けることができず、数人の役員(執行役員、監査役員)と役員会、会計監査人といった機関だけがある空箱のような存在です。

また、投資法人が配当可能利益の90%超を支払配当として投資家へ分配するなどその他一定の要件を満たすことで分配金には課税されない税制から、収益の大部分を投資家に分配することが可能です。

投資家はREITの稼いだ収益を不動産投資法人の段階で課税されずにそのまま受け取ることができますので、株式や契約型投資信託と比較すると相対的に高い配当利回りが期待できます。

なお、不動産投資法人から支払を受ける配当等については、株式の配当と同じようなものですが、不動産投資法人と投資主との間で二重課税にならないため、所得税の配当控除の対象外(国税庁)、受取配当の益金不算入の対象外(租税特別措置法65条の15 4項)となっており、不動産投資法人からの配当には税金が課されます。

投資法人はつぶれないのか?不動産投資信託の過去
投資法人は不動産の開発を行わず不動産を保有することだけを目的とし、複数資産の保有によりリスクが分散され、さらに家賃収入が主な収入源であるため破綻しにくいと考えられていました。

しかし、リーマンショック後の2008年10月9日ニューレジデンス投資法人が民事再生法を申請し、実質的に破綻となりました。

破綻の原因は都心の大規模なマンションを先日付で売買契約するフォーワードコミットメントで取得しようとしましたが、リーマンショックで増資も借り入れもできず契約不履行で莫大な違約金が発生したためでした。

ただしその後、大和ハウスリート投資法人に吸収され、破綻は免れました。

現在はフォワードコミットメントは原則として禁止され、リスクに配慮した商品設計がされるなどREITのリスク管理は格段に向上しています。

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REIT(不動産投資法信託)に関わる関係者とその役割

不動産投資法人は法律によって、不動産の運用などの実質的な業務を行うことが禁止され、不動産の購入や維持管理、会計などの一般事務業務は外部の専門家に委託することになっています。
不動産投資法人と外部の専門家、投資家との関係は次のようになります。

投資家

不動産投資法人は不動産投資証券を発行し資金を調達しますが、この投資証券は投資口数を表示し、投資口は均等に細分化された割合的単位であることから、投資家は投資口数に応じて投資するとともに、投資家は投資口数に応じた収益の分配を受けます。
なお、(不動産)投資証券への投資家のことを投資主といいます。

また不動産投資法人は不動産の購入や保有不動産の修繕や敷金・保証金の返還などのために投資法人債(株式会社における社債に相当)を発行し資金調達ます。投資家は投資法人債を購入することで不動産投資法人へ貸付し、金利収入を得ます。

金融機関

不動産投資法人は不動産の購入や保有不動産の修繕や敷金・保証金の返還などのために融機関から借り入れを行います。

不動産運用会社

REITが投資する不動産の調査・選定、賃貸条件の決定、売却や修繕計画の立案、資金調達などの財務戦略など、不動産運用に関する業務全般を行います。ファンドマネージャー的な立場で収益を左右する最も中心的な役割を担っていますので、スポンサーとともにREITに関わる関係者の中で特に重要な存在です。

不動産運用会社になれるのは、金融商品取引業者であるとともに宅地建物取引業の免許を受けた会社などになります(投資信託及び投資法人に関する法律199条)。

スポンサー

不動産運用会社に出資している大株主(親会社)です。

スポンサーの具体的な役割は不動産投資法人により異なりますが、不動産投資法人の立ち上げや運や証券取引所への上場、上場後における不動産の取得や運用のサポート、不動産運用会社へ人材やノウハウ、情報の提供、さらにはREITで運用する不動産の調査や取得、スポンサーが保有する不動産のREITへの売却、賃貸などREITの運用にかなりの影響を与えます。

このことからスポンサーの信用力がREITの評価や資金調達力に影響を与えますので、不動産運営に精通し、人材豊富で優良物件を数多く保有している大手不動産会社がスポンサーになることが多く、大手不動産会社がREIT市場に大きな影響を与えています。

不動産運営管理会社

不動産運用会社から委託を受けてREITが保有する建物の管理業務や、賃料の請求、テナント募集、賃貸契約の更改交渉などを行います。

建物の管理には、空調やエレベーター、セキュリティーなどの各種設備の点検、光熱費などのコストの低減、水質・騒音などの環境衛生面の管理、さらには各種設備の更新計画の策定などが含まれます。

資産保管会社

不動産投資法人からの委託に基づき、不動産の登記済権利証、信託受益権証書、契約書などの不動産投資法人の取得する資産に係る権利を証する書面やその他の書類の保管、金銭出納管理業務を行う会社です。
投資法人から預かっている資産と自社保有の資産を分別して保管することが義務付けられ、資産保管会社が破綻するようなことがあっても預かった資産は安全に保全されます。

資産保管会社となれるのは、信託銀行や証券会社(有価証券等の保管に限る)などです(投資信託及び投資法人に関する法律208条)。

一般事務受託者

不動産投資法人からの委託により、不動産投資証券・不動産投資法人債の募集、不動産の運用損益の計算、納税事務、会計帳簿の作成、投資主名簿の作成・備置、投資主総会などの機関の運営、投資証券の名義書換・発行、分配金の支払いなどに関する事務を行う会社です(投資信託及び投資法人に関する法律117条)。

信託銀行が一般事務受託者となることが多く、投資法人から委託を受けた一般事務受託者は、善良な管理者の注意をもって一般事務を行なわなければならず、一般事務受託者が任務を怠ったことで投資法人に損害を生じさせたときは、投資法人に対し損害賠償責任を負います(投資信託及び投資法人に関する法律118条、119条1項)。

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